日本学術会議の任命拒否で菅義偉首相が「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動の確保」を理由に挙げたことを巡り、基になった2003年と15年の文書をまとめた政府の有識者委員会では、人事介入を想定した議論はなかったことが18日、分かった。当時の複数の委員が共同通信に証言した。

委員から「会議の結論と、菅首相が(拒否の理由として)持ち出したことには乖離(かいり)がある」など、文書の意図とは大きな開きがあるとの指摘も出ており、人事介入の妥当性に疑問の声が強まる可能性がある。

菅首相は、学術会議の会員候補6人の任命拒否に関し、会議の在り方を検討した過去2回の有識者委の報告書などを踏まえたとする。一方、詳しい理由は、16日の梶田隆章会長との会談でも明らかにしなかった。

政府の総合科学技術会議の下に設置された有識者の専門調査会は03年、行政改革の一環で意見書をまとめ「学術会議は総合的、俯瞰的な観点から活動することが求められる」と指摘した。

委員を務めた有識者は、会員の選考方法が当時の大きな課題だったとした上で「政府の任命拒否は想定していなかった」と明言。従来は個別の学会などの推薦を基に会員を選んでいたが、03年の意見書を踏まえ「学術会議が自ら最善と考える人を選ぶ形になった」と述べ、一定の改善が図られたとの認識を示した。

15年には、内閣府が設けた別の有識者委が報告書をまとめた。学術会議の会員は「専門分野の枠にとらわれない俯瞰的な視点で向き合う人材が望ましい」とした。

座長を務めた京都芸術大の尾池和夫学長は「推薦のまま首相が任命するのが当然と思っていたので(任命拒否は)議論しなかった。今回、政府が自動的に任命しなかったのは法律違反だ。政府がコントロールしてはいけない」と指摘した。

他の複数の委員も、人事介入の想定はなかったと証言。名古屋大の隠岐さや香教授は「当時はそういう心配はなく、業績以外の基準で候補が落とされることはないだろうと認識していた。今回は異様なことが行われたと捉えている」と述べた。   (共同)