菅義偉首相は21日、新型コロナウイルス感染症対策本部を官邸で開催し、観光支援事業「Go To トラベル」と「Go To イート」の運用見直しを表明した。経済再生を優先してきた首相にとって、肝いり事業の方針転換を迫られた形だ。「Go To トラベル」は対象地域や時期が決まっていない生煮えの公表となり、旅行客や事業者に混乱が広がりそうだ。

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経済回復と感染対策の両立を掲げてきた菅首相が、方針転換に追い込まれた。政府は「Go To トラベル」見直しについて、感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する措置を導入。飲食業界の支援策「Go To イート」では食事券の新規発行停止などの措置の検討を都道府県知事に要請するとした。

首相は新型コロナの感染状況に関し「最大限の警戒状況が続いている」とし「効果的な対策を迅速に実行する」と強調した。専門家で構成する政府の対策分科会が20日、医療への負荷を過大にしないための取り組みを提言。感染拡大の勢いが止まらず、苦渋の選択を迫られた。

見直しは表明したものの、時期も対象地域にも言及できない生煮えの公表になった。予約停止の対象は、感染状況を表す4段階の国基準で「急増」のステージ3相当の地域で、北海道や東京都、愛知県、大阪府が該当すると見込まれるが、西村康稔経済再生担当相は会見で「具体的な内容は検討中」を繰り返した。

感染拡大地域の住民が他の地域に旅行する場合、引き続き割引対象になるかどうかは、はっきりしない。7月の「-トラベル」導入時に東京が除外された際は、都民の旅行も割引対象から外れていた。だが、今回について、西村氏は明言を避けた。予約済み旅行の取り扱いについても不透明だ。西村氏は「キャンセル料を払わなければならないから、解約をちゅうちょするようなことがないようにする」とだけ話したが、キャンセル料の補償の具体策には触れなかった。

コロナ新規感染者数が連日最多を更新する中、首相は専門家の警鐘でようやく重い腰を上げた格好。感染拡大が日に日に勢いを増す中、首相は感染が再拡大した11月以降は記者団のぶら下がり取材に応じるが、記者会見は行っておらず、コロナ対策をめぐり、菅氏が説明責任を果たしていない状況が続いている。すでに21日から3連休は始まっており、野党は判断が遅いとして首相の姿勢を追及する構えだ。