北海道函館市は近年のスルメイカ不漁を受け、地域経済を支える新たなブランドを立ち上げようとキングサーモンの養殖に乗り出した。本年度から研究を始め、2026年度から天然稚魚などに頼らない完全養殖に挑戦する。サーモンの養殖は各地で行われているが、海外からの輸入が中心で希少性が高いキングサーモンで事業化に成功すれば全国初となる。

函館市は、イカ漁など自然環境に左右されやすい「取る漁業」が振るわないため、養殖による「育てる漁業」の比率を高める方針だ。サケ科では最も大きく、脂がのって美味とされるキングサーモンに着目。「値崩れを起こさず高値で取引されるのでは」と養殖する魚種に選んだ。

市は本年度予算に研究や施設費として5700万円を計上、研究は北海道大大学院水産科学研究院、函館国際水産・海洋都市推進機構と共同で行っている。まずは人工ふ化させたキングサーモンと定置網漁で取った天然ものを交配し、受精卵を幼魚から親魚に育てる。5年後には人工の親魚だけを使い、完全養殖の試験を行う計画だ。

国内で唯一、キングサーモンとニジマスの交配種「富士の介」を養殖している山梨県水産技術センター忍野支所は、研究から出荷までに10年以上の歳月を費やした。キングサーモンも養殖しているが「警戒心が強くて餌を食べず、大きくならない。養殖魚としての活用は難しい」として事業化の検討には至らなかった。

餌代など採算面の課題もあるが、函館市の工藤寿樹市長は、キングサーモンの養殖が不漁や担い手不足で苦境に直面する水産業を後押しすると期待する。「養殖に成功すれば函館のブランド力が高まる」と強調した。(共同)