世界各地のウェブサイトが一時閲覧できなくなった問題は、米IT企業ファストリーが手掛けるコンテンツを効率的に配信するためのクラウドサービスの障害が原因だった。

米企業の障害が世界に影響を与え、日本でも身近なサービスが突然停止する事態が相次ぐ。専門家はクラウド分野で少数企業が市場を寡占する弊害を指摘する。

▽CDN

「多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません」。8日夜、ファストリー日本法人は障害について謝罪するコメントを公表した。大手メディアのほか、メルカリ、楽天グループ、米アマゾン・コムなどのサイトが一時見られなくなった。

停止したサイトの多くはデジタル広告収入を得ており、全世界で1時間当たり30億円以上の損失が出たとの試算もある。

ファストリーが提供するのは「コンテンツ・デリバリー・ネットワーク」(CDN、コンテンツ配信網)と呼ばれるサービス。大量のアクセスがあるサイトを運営する場合にサーバーの負荷を分散させ効率良く回線を使うようにする仕組みだ。

例えばホワイトハウスのサイトを閲覧すると、どの国からアクセスしても同じ画面が表示されるが、実際にはアクセスした人がいる場所に応じ、世界各国に配置されたサーバーのうち最も近い場所にアクセスするようになっている。

ファストリーはCDNを展開する企業の中で「5本の指に入る」とされ業界では知られた存在。障害が起きたにもかかわらず翌日には株価が上昇した。あるIT企業幹部は「復旧も迅速でクラウド最大手のアマゾンが利用するほど優秀なサービスと受け止められたのではないか」と解説した。

▽社会的役割

米企業のクラウドサービスが原因で、日本国内に影響が出る事例は近年相次いでいる。昨年、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の障害でスマートフォン向け決済アプリ「ペイペイ」が一時利用できなくなった。今年5月にはセールスフォース・ドットコムの障害により、8都府県の11自治体で新型コロナウイルスのワクチン接種予約が中断した。

デジタル社会に欠かせないクラウド市場は急成長しており、MM総研によると、2019年度の国内市場規模は2兆3572億円。24年度には5兆円台に達する見込みだが、大きなシェアを占めるのが米国の巨大IT企業群だ。

立命館大の上原哲太郎教授(情報工学)は「寡占が進んだ結果、一企業の障害が国境を越えて広がることになった」と懸念する。CDNには災害時などに自治体やニュースサイトにアクセスが殺到して停止することを防ぐ社会的役割もあるとして「導入時には障害のリスクを十分に考慮し、影響の大きいサイトはあらかじめ対策を準備してほしい」と話している。(共同)