東京電力は2年後をめどに実施する東京電力福島第1原発処理水の海洋放出で、処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度を基準値未満にするために海水で薄めるが、放出前に濃度を測定せず、計算だけで基準を満たしているか判断する方針だ。原子力規制委員会の会合では、有識者から「安全性を示すためにも測定してから放出するべきだ」との声もあり、今後、妥当かどうか議論する。

トリチウム濃度の国の基準は1リットル当たり6万ベクレルだが、東電は1500ベクレル未満という独自の基準を設定。処理水を海水で100倍以上に薄めて放出するとしている。

政府による海洋放出決定を受け東電が4月に示した計画では、処理水を分析用のタンクに入れ、トリチウムや他の放射性物質の濃度を測定する。

その後、タンクなどで処理水と海水を混ぜて薄めるのではなく、ポンプでくみ上げた海水が流れる中に処理水を混ぜ、そのまま海に流す。この水のトリチウム濃度は測定せず、処理水の濃度と、くみ上げる海水の量の計算だけで基準を満たしているか判断する。

規制委の会合では有識者から「放出する水の濃度測定をぜひやってほしい」との意見が出た。東電は定期的に放出口の水を採取し、濃度を確認すると説明。しかし測定には半日から1日かかるため「基準超えが分かったとしても、その時には既に海に放出されている。くみ上げる海水の流量を常に測定し、十分でない場合は放出を緊急停止する」と理解を求めた。

東電は第1原発敷地内でくみ上げた井戸水などを海に放出しているが、放出前にトリチウム濃度を測定している。同様の対応を取らないことについて、東電は海水で100倍以上に薄めた水が大量になることを理由に挙げる。計画では1日最大500トンの処理水を放出するため、単純計算で少なくとも5万トン(標準的なタンク50基程度)の容量が必要となるが、このような設備の設置は「現実的には困難」としている。(共同)