安倍政権に大誤算-。東電柏崎刈羽原発の再稼働が争点になった新潟県知事選は16日、投開票され、再稼働に慎重な野党3党推薦の米山隆一氏(49)が、自民、公明推薦の森民夫・前長岡市長(67)らを破り初当選した。今夏の参院選に続き、野党が与党に勝つ「新潟ショック」。森氏の無投票当選が見込まれた時期もあり、「勝てる選挙」を落とした自民党には大打撃だ。23日投開票の衆院2補選は与党が優勢だが、新潟の結果が、首相の解散戦略に影を落とす可能性もある。投票率は53・05%。

 告示6日前の出馬表明で、下馬評は「苦戦」だった米山氏が、どんでん返しで勝利した。原発再稼働に慎重な泉田裕彦知事の路線継承を主張し、共産、自由、社民の野党3党、市民団体など幅広い支持を得た。当確の一報を受け、「オール新潟の勝利だ」と喜んだ。

 新潟は今夏の参院選で、野党統一候補が自民党を大接戦で破った「新潟ショック」の地。今回は約6万票もの差がつき、森氏は「私の実力不足」と語った。

 当初、野党の候補者調整が難航。米山氏の出馬表明まで候補予定者は森氏だけで、無投票当選の可能性もゼロではなかった。民進党の支持母体、連合は森氏を支援。米山氏は自主投票の民進党を離党し、出馬に踏み切った。終盤、米山氏の追い上げが分かると、「初白星」を意識した民進党の蓮舫代表が、急きょ応援に入る「ハプニング」を招くほど、最後は与野党対決の総力戦が展開された。

 当初は楽勝ムードだった自民党は、衝撃を隠せない。終盤に大接戦が判明。危機感を強めた二階俊博幹事長が現地を回り組織を引き締めたが、届かなかった。

 自民党が深刻に受け止めるのは、新たな脱原発知事の誕生に加え、今日17日に本格化するTPP承認案の審議など、首相の政権運営を左右する可能性があるためだ。本来は保守地盤の新潟で黒星が続く現実も、党は深刻に受け止めている。

 現状では、首相の衆院解散戦略への影響も避けられない。首相は、与党が優勢の衆院東京10区&福岡6区補選、新潟県知事選を3連勝し、野党の選挙体制が整わないタイミングで、衆院解散に踏み切る意向とみられてきた。有力日程の「1月20日衆院解散→2月19日投開票」を前倒しし、年内解散の臆測まで出ていた。

 しかし、閣僚経験者の1人は「衆院解散どころではない」と指摘。「高い支持率に慢心した、安倍政権の緩み、おごりの表れだ」(幹部)の声や、解散戦略が「白紙に戻った」と懸念する声も出ている。