2020年東京五輪の競技会場見直しを検討している東京都の小池百合子知事に、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が「待った」をかけた。両者は18日、都庁で会談。コスト削減への都民の支持を背景に、妥当性を訴える小池氏に、バッハ氏は招致時のルールを変えないようくぎを刺し、事実上の「小池包囲網」といえるIOC、政府、大会組織委員会、都の4者協議も提案。復興五輪を目指す小池氏肝いりの「長沼開催案」は、ピンチに追い込まれてきた。

 和やかだった小池-バッハ会談が緊張に包まれた。小池氏が、都政改革本部の五輪調査チームに提案された、3つの競技会場計画見直しを説明した時だった。

 「ワイズスペンド(賢い支出)になっているか。復興五輪に資するかもポイントだ」。ボート、カヌー・スプリント会場を都内に建設中の「海の森水上競技場」から宮城県登米市の「長沼ボート場」に変更する案を念頭に説明。バッハ氏は「モッタイナイはもちろん(必要)」と、小池氏のこだわりフレーズでコスト削減に理解を示しつつ、はっきりとクギを刺した。

 「東京が招致に勝ったのは、説得力ある実行可能なプランを出したから。選ばれた後のルールを変えないことこそ、日本、東京、IOCの利益にかなう」

 国内外の競技団体や組織委など、反対が強い大幅な会場計画の変更をけん制。「大原則を守ることで、ともに東京の予算やコストを見直し、実行可能にできるか考えていける」とも指摘。見直しはルールを変えないことが大原則だとした。

 バッハ氏は、たたみ掛けるようにIOC、政府、組織委、都の4者での作業部会設置を提案。「一緒に見直した分析で出る結果はモッタイナイことにはならないはず」「成功は、それぞれの組織が一体となって獲得できる」と説いた。

 小池氏は「情報公開を徹底させるならよろしい提案では」と応じ、会談後には「私も(4者協議を)提案しようと思っていた」と述べたが、バッハ氏のペースに押され気味だった。

 4者協議には、小池氏と対立する組織委だけでなく、「海の森-」開催を求める国内外の競技団体も同席予定。今後は、小池氏が今月中に示す判断を受けて来月初会合を行い、IOC副会長で、東京大会の準備に当たるコーツ調整委員長が来日して開かれるIOC調整委員会でも議論する。コーツ氏も「東京開催派」のボート競技出身。小池氏は四面楚歌(そか)となり、劣勢は明らかだ。「できたら都庁でやってもらえれば」。小池氏は協議のホーム開催に淡い期待を示した。

 最近の世論調査で、費用見直しに8割以上の賛成があったと訴えた小池氏。都民の支持を背景に独走してきたが、「バッハの壁」が立ちふさがった。地元で待望論が広がる長沼開催案は、ピンチを迎えつつある。【中山知子、三須一紀】