安倍晋三首相は18日、ニューヨークでトランプ次期米大統領と約1時間半、会談した。外国首脳の中で、一番乗りの「トランプ詣で」。首相は「信頼できる指導者だ」と持ち上げ、ゴルフという同じ趣味を持つトランプ氏に、日本から持ち込んだ「本間ゴルフ」の最高級ドライバー(54万円)をプレゼント。トランプ氏も首相にゴルフグッズを贈呈。趣味の一致が、今後の日米関係を占う鍵に浮上した。ただ「暴言王」への過度な接近は、国際社会に誤解を与える可能性もある。

 マンハッタン5番街のトランプタワー。首相は、長女イヴァンカさんと夫のジャレッド・クシュナー氏に迎えられ、最上階58階のペントハウスで会談に臨んだ。オバマ政権への配慮もあってトランプ氏側は4人、首相は通訳と2人だけの超少人数。内容も公開されず、異例の初会談だった。

 それでも、時間は予定の倍に及んだ。首相は会談後、「同盟は信頼なくして機能しない。トランプ氏は信頼できる」とし、数々の暴言で世界の不信を買うトランプ氏の指導者の資質を評価した。一方で日米同盟の重要性を確認し、トランプ氏が否定的なTPPへの理解も促したとみられる。

 首相は、欧米の評判が悪いロシアのプーチン大統領ともうまく付き合い「田中角栄氏以来の人たらし」(自民党の高村正彦副総裁)と評される。ビジネスライクなオバマ氏より、生々しく感情をぶつけるトランプ氏の方が「ウマが合う」(官邸筋)の指摘もある。

 首相は今回、世界に14のゴルフ場を持ち、自身と同じゴルフ好きのトランプ氏に「本間ゴルフ」のドライバー1本を贈った。同社の商品の中で、シニア層向けの最高級ライン「BERES(ベレス)S-05 5S」。「S」はSTAR(星)で文字通りの5つ星。価格は54万円だ。シャフトには最高級のカーボン繊維が使われ、軽くて柔らかい。ヘッドはトランプカラーのゴールドだ。

 政府関係者によると、トランプ氏は包みを開けてドライバーを振り、首相にもシャツなど、ゴルフ用品を進呈。1階で見送り、ラウンドの約束までしたという。

 首相は13年2月、ゴルフ好きのオバマ大統領との初会談でも、日本製パターを贈呈した。トランプ氏もゴルフ好きだったのは、個人的信頼関係の構築にこだわった首相に追い風だった。

 ただ、ゴルフでは意気投合してもトランプ氏の腹はまだ読めない。トランプ氏への過度な接近は、人権問題に敏感な欧米世論の批判を受ける可能性もある。首相は当面、綱渡りの日米外交を強いられそうだ。

 ◆トランプタワー トランプ氏の住居があるニューヨーク・マンハッタン中心部の高層ビル。セントラルパークに近い5番街の一等地にあり金色に輝く正面玄関が特徴。低層階は飲食店やオフィスで高層階は高級マンション。高さ約200メートル。公式サイトは68階建てとしているが、米メディアによると58階建て。