東京都の小池百合子知事は16日、20年東京五輪・パラリンピック会場見直しで結論を先送りしていたバレーボール会場について、有明アリーナ(江東区)を新設すると正式に表明した。見直し対象だった3会場とも従来案になるが、小池氏は約400億円のコスト削減を引き合いに「時間の浪費だったとは思わない」と強調した。大会後は民間企業に運営権を売却し、スポーツの聖地とすることにも意欲を示した。21日に予定される電話形式の4者協議で、正式決定する。

 小池氏がまず触れたのは「有明決定」の最終結論ではなく、見直し作業で削減したコストのアピールだった。イラストで、有明は404億円→339億円へ65億円減らしたと説明。ボート、カヌー会場の海の森水上競技場、水泳の五輪水泳センターと合わせて、「ざっくり400億円を削減できた」と、胸を張った。

 国際オリンピック委員会(IOC)が既存施設の活用を推奨していることを受け、横浜アリーナの活用を模索したが、断念。詳細な理由には触れず、会場周辺のスペース確保など「さまざまな特殊要因があった」と述べるにとどめた。「普通の施設を使うのは理にかなったことだが、違う考えの方がいろいろ進めていた」と、未練もにじませた。

 「最終的に有明アリーナに」。有明決定はごく短い言葉で伝えた。「3会場とも前と同じというかもしれないが、何にどんなお金がかかるか目の当たりにしたと思う」「ただ安くするわけではなく、時間を浪費したとは思わない。都民と一体感が得られた」と、見直し作業の意義を強調した。

 既存施設の活用による「小池色」にこだわったが、10月のバッハ会長との会談で会場の大幅見直しをしないようクギを刺され、流れは変わった。会場候補に一時、代々木国立競技場を検討したことも明かした。

 目に見える成果が少ない中、目先を変えた「小池流」もPR。「会場整備は今こそ発想転換のチャンス。(1)点から面(2)コストから投資(3)官から民の3つの視点を入れ込んだ」と主張。大会後は「有明レガシーエリア」として開発し「甲子園といえば野球。スポーツするなら有明のようなまとめ方をしたい」と述べた。

 大会後は「コンセッション方式」で民間企業へ運営権を売却。都が同方式を採用するのは初めてで、これも成果の1つと主張した。

 関係者からは「やっと結論を出してくれた」と安堵(あんど)の声が広がる一方で、整備費用の分担など、再び難航必至の課題は残る。競技が開かれる他の自治体の予算編成にも影響しかねず、一難去って、また一難だ。【中山知子】