大阪市の学校法人「森友学園」が、大阪府豊中市の国有地を、開校予定の小学校の用地として評価額より約8億円安く取得していた問題が、安倍政権を揺るがしつつある。同校の名誉校長は安倍晋三首相の昭恵夫人だが、ホームページに掲載されていた夫人のあいさつ文は23日までに、突然削除された。不透明な土地取得の経緯に政治家は関与していないか。野党はこの日も、国会で追及した。系列幼稚園でトイレの時間を決めるなど、学園の教育方針にも異論が噴出している。

 「疑惑の土地」は、豊中市の国有地。評価額は9億5600万円だが、学園は、地下のごみ撤去費(8億1900万円)などが差し引かれた約1億3400万円で購入した。評価額の約14%で、近隣国有地と比べ、破格の安値。さらに民進党によると、国は汚染土除去費用として1億3176万円を支払ったと指摘しており、学園の負担はたった200万円だったとも指摘されている。財務省は「適正な価格で売った」とするが、積算根拠をどう出したかが焦点になっている。

 23日の国会審議で財務省の担当者は、値引きした約8億円を国側が積算する際、地下9・9メートルにごみがあると想定したことについて「(ごみがあったか)確認していない」と明かした。「いいかげんな見積もりではない」としているが、ずさんさは否めない。麻生太郎財務相は、国有地の売買について「適正な手続きで処分を行った。政治家による不当な介入はない」と強調したが、河戸光彦会計検査院長は今回の問題で、検査を行う意向を示した。

 学園の教育方針にも批判が集中。系列の塚本幼稚園は決まった時間以外トイレに行けないことや、「パンツで(漏らした)ウンチをくるみ、バッグに入れて持ち帰らせる」などの元保護者の証言も紹介された。

 民進党はこの日、首相夫妻と籠池(かごいけ)泰典理事長の関係に言及。今井雅人議員は、夫人が講演で「こちらの教育方針は、主人も大変素晴らしいと思っている」「(幼稚園を卒業し)公立の学校に行くと普通の教育になり、芯が揺らいでしまう」と語ったと指摘。ホームページ上に掲載された夫人の肩書に「安倍晋三内閣総理大臣夫人」とあったことを問題視。「何かあれば、この方にも責任がいく」と指摘した。

 首相は国会で、籠池氏が「安倍晋三記念学校」の名前で寄付を募ったことに関し、「(夫妻が払い下げに)関わっていたら、首相も国会議員も辞任する」と明言したが、今井氏は「広告塔に使われていると言われても仕方ない。問題が起きたら(首相も)連帯責任になる」と踏み込んだ。

 一方、共産党の志位和夫委員長は会見で、「政治家の関与なしには起こり得ない」と、「口利き疑惑」を追及する構えを示した。

<格安売却発覚の経過>

 ▼2月8日 豊中市議が同市の国有地8770平方メートルの森友学園への売却額を非公表とした財務省近畿財務局の決定の取り消しを求め提訴

 ▼9日 朝日新聞が売却額は近隣国有地の10分の1、1億3400万円と報道

 ▼10日 財務省が鑑定価格は9億5600万円だがごみの撤去費8億1900万円を差し引き、売却額は1億3400万円と公表

 ▼13日 籠池学園理事長が朝日新聞に実際のごみ撤去費は1億円くらいと説明

 ▼17日 安倍首相が「私や妻が(売却に)関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」と答弁。学園が「安倍晋三記念小学校」の文言で寄付金を集めていたことは「初めて知った」

 ▼20日 民進党が国が汚染土除去費用1億3176万円を負担していたと指摘。「国の収入は約200万円。ただ同然で異常」と追及。財務省は「手続きにのっとった」

 ◆22日 大阪府の私学審議会で新1、2年生各80人の募集に対し、応募は1年生40人、2年生5人と判明。系列の幼稚園でお漏らしした便と下着を通園バッグに入れて持ち帰らせていたことも明らかに