「都議会のドン」こと都議会自民党の内田茂氏(77)は25日、今年7月の都議選不出馬を、初めて表明した。高齢と体調不安を理由に挙げたが、昨年の都知事選以降、自身を目の敵にする小池百合子知事との戦いに敗れ、万事休す。引導を渡す形になった小池氏に、首長と議員が別々に選ばれる二元代表制をわきまえるよう注文するひと幕もあった。政界引退は否定したが、ますます小池色に染まりそうな都政に、ドンの居場所は見つかるのだろうか。

 内田氏は、自民党千代田支部の総会で都議選不出馬を表明した。5日の千代田区長選で、推薦候補が小池氏支援の現職に敗れたことを謝罪。千代田総支部長の辞任を表明し、「再起をかけ、支部をつくり直そう」とあいさつした。

 会合後、昨年の都知事選後では初めて正式な取材に応じ、(1)任期中に80歳を越える場合は公認しない党都連の内規(2)体調不安の2点を不出馬の理由に挙げた。「血管の問題」の持病があり「手術もしたが、加齢も含めなかなか回復できない。もし当選しても今後4年、活動できるか不安があった」という。「一昨年の暮れには(不出馬を)決めていた」と、区長選敗北の引責ではないと強調した。

 小池氏が昨年の都知事選で、都議会の実力者・内田氏を「ドン」と呼び、政治手法を「ブラックボックス」と位置づけ、小池氏VSドンの対立構図が確定。しかし都議選で惨敗し、都連幹事長辞任に追い込まれた。そして今回の千代田区長選が、内田氏の命運を決めた。小池氏との「代理戦争」で、トリプルスコアの大惨敗。「内田さんは区長選に懸けていた。都議選に出て負けるくらいなら、身を引くしかない」(党関係者)。代理戦争に勝った小池氏に、とどめを刺された。

 内田氏は小池都政の感想も、公の場で初めて語った。「勝敗は兵家の常。選挙は負ける時も勝つ時もある。終わった後の納め方だ」と述べ、「負けたからといって、安易な妥協はしない」。自民大ピンチの下馬評が流れる都議選を控え、小池氏になびく同僚をけん制するような、「ドンのプライド」もチラリ。「二元代表制の世界に飛び込んできたのだから、そのことをわきまえて、知事もやってほしい」と注文もつけた。

 任期は全うする。政界引退かと問われると、「政界は引退しないよ。政治活動は続けたい」。あくまで、都議からの引退と強調した。【中山知子】