東日本大震災の発生から丸6年が経過した11日、全国各地で追悼式が行われた。死者1万5893人、行方不明者2553人(10日現在)という大災害を受けた被災者の心の傷は癒えていない。津波で児童74人、教職員10人が死亡、行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。学校管理下で犠牲となった子どもの無念さを思う遺族は、今も張り裂けそうな心の痛みを抱えている。当時小学3年だった、一人息子の健太くんを亡くした佐藤美広(みつひろ)さん(55)とも子さん(53)夫妻がこの6年の思いを語った。

 「子どもをネタに金もうけか」。美広さんはJR石巻駅のトイレで見知らぬ人から暴言を浴びた。昨年10月、大川小裁判で県や市に約14億円の賠償命令が下った数日後のことだった。「事故の真相が知りたい」だけなのに。

 妻とも子さんは2度の流産の末、健太くんを授かった。自宅は大川小近くに残っている。でも今は別の地区に住む。息子と同世代の子どもたちが成長する姿を見ていられないからだ。

 健太くんの祭壇には、ヤンキース田中将大投手が楽天時代の13年に達成した、24連勝の記念グラブが置かれている。10万円超の高価な物だったが、息子が目を輝かせて応援した選手のモデルだ。「息子なら買うだろう」。あえて健太くんがためたお年玉で買った。