豊洲市場の移転問題を検証する都議会の調査特別委員会(百条委員会)で20日、石原慎太郎元都知事(84)の証人喚問が行われた。

 次に東京改革の酒井大史都議が質疑に臨んだ。

 -石原元都知事は都議会の答弁で、豊洲新市場について安全、安心を強調していた。安心を強調する発言していたことは記憶しているか、いないのか?

 石原氏 はい、記憶しております。

 -今になって、安心をかなぐり捨て、安全であれば良い、と言うのは整合性に合わない。そもそも風評と科学は勝ち負けの問題ではなく、風評被害が起らないような安心な市場を作るために科学を駆使すると言っていたはず。盛り土も不十分で、土壌汚染対策も万全でないと考えられる。その辺にご自覚いただきたい。東京ガスの資料や大矢元市場長の証言からも、99年11月5日に一橋大の後輩である、東京ガス上原元社長の面会していたことが明らかになったが記憶しているか?

 石原氏 覚えておりません。いろいろな人といろいろな形で会ったのは事実ですけども、東京ガス上原さんという固有名詞の存在と私が面会したことは覚えていない。

 -手元に00年3月15日の予算特別委員会の速記録があるが、石原元知事は上原元社長とは言っていないが「東京ガスの社長が私の後輩でございまして、この問題担当の重役兼傍系会社の社長も、そのさらに後輩で同窓なんですけども」と、お会いしたと議会答弁で示唆している。過去の事例や東京ガスの資料、11月12日に福永元副知事が大矢市場長と東京ガスに訪問し「交渉の始まりだ」と証言した。知事が豊洲移転の端緒を開いたと言うほかない。次に、豊洲市場の移転について。10年10月22日、石原元知事は「議会が決めかねるから決断した」と議会を愚弄(ぐろう)し、土壌汚染対策費の追加負担の交渉中であるにも関わらず強引に豊洲移転を決定した。当時の議会構成では、知事の決定に賛同する議員は少数派だったが、その後、私どもの会派の議員を寝返らせた。奇しくもも3日の会見で「委員長の民主党の議員を説得し、1票差で採決が決まって(中略)後にこの人は自民党の推薦で世田谷区長選に出て、私も依頼があり応援した(中略)操作の結果」と発言した。知事は元民主党の議員を説得し、誰が操作をしたと言うのか?

 石原氏 これは私では分からない。議会の中での議会対策ですから、私が知る余地は、とてもありません。東京ガスの上原元社長と面会したことも、いろいろな人といろいろな話をしたので詳細は覚えていない。。

 -石原元知事が10年10月に移転の決定をし、11年3月11日、あの東日本大震災の日に議決を得て、同31日に協定書を結び土地の売買契約が成立した。この期間の中で、結果としては成就しなかったが1月25日に最終協定書のたたき台を東京ガスに示し、その第5条に「中央卸売市場が行った調査以外の汚染土壌が発見され、新市場の建設及び業務運営に重大な支障となる場合は、中央卸売市場と東京ガスは誠意を持って再度協議し、取り扱いを決定するものとする」と、いわゆる瑕疵(かし)担保責任を盛り込もうとしていた形跡がある。岡田元市場長は「交渉合意を優先した」と証言した。買収の代表者のあなたは、都民の利益を守るために、こうした交渉にこそ方向性を示すべきではなかったか?

 石原氏 私の責任は、繰り返し申しましたように、ピラミッドの頂点にいる人間として、各局、各委員会、議会を含め是としと報告を受け、今の技術を持って土壌対策が出来ると確認した上で裁可した。これはあくまで私の責任で、行政手続きでは行われる最終点だったと思っております。

 -最終責任を下した裁可の責任はあるとおっしゃった。裁可した責任は都政全般に渡ると思う。認めることが矜持(きょうじ)だと思う。

 次に都議会共産党の曽根肇都議が質疑に臨んだ。

 -土壌汚染対策費の分担を、都と東京ガスでどう決めたか? 16年10月に小池都知事から文書で質問が送られたと思うが、その中で土壌対策費の負担区分について

 「豊洲市場用地購入後に、土壌汚染対策費用として858億円が必要となったが、東京ガス側は78億円を負担することで合意し、、残りは都が負担した。適切な措置か?」

と質問があった。これに対し石原証人は

 「今、思えばアンフェアだと思うが、私の判断を求められることがありませんでした」

 と答えた。本当に判断を求められなかった?

 向こうは売りたくない、こちらはどうしても買いたいという条件の中での交渉。私は担当者に一任する以外ありませんでしたし、詳細については記憶がございません。

 -18日の証人喚問で、岡田元市場長は「着任して早い段階で、東京ガスに約80億円の負担を求める市場の考え方は、知事に説明し了承を受けた」と偽証が許されない百条委員会で語った。それが真実では?

 石原氏 そういった問題も含め、ことは全部審議会が審議した上で是としたわけで、私はことを受けて是とするしかないのが行政手順だと思います。

 -知事の最終的な判断を待たなければならない問題だということを申し上げる。11年3月31日に最終的な土地売買契約と土壌汚染対策の締結書が結ばれた。証人は知事として事前に報告を受けていたか?

 石原氏 受けたか受けていないか覚えておりません。ことは全て担当者に一任しておりましたから。

 -記憶にないというのは問題じゃない。この日だけで2つの契約書で559億円の巨額な契約です。その前の年に、あなたは新銀行への400億円の追加出資を決めた際に「これを毀損(きそん)したら私は知事を辞めます」と言っている。559億円…最終契約が記憶にないのは知事として考えられないこと。岡田元市場長も、契約9日前の3月22日に、ブリーフィングで知事に説明したおっしゃったし、資料もある。

 石原氏 ですから、何なんですか? ですから…私は記憶にございません。記憶にないものはないんですから。私は、それで何をすべきだとおっしゃるんですか?

 -これほど重要問題を覚えていないということ自体、信じられない。あなたは最近「豊洲は安全だ。早く移転すべき」と主張したが、環境基準100倍のベンゼン、検出されてはいけないシアンまで18箇所で検出された。地上も地下も環境基準値以下にすると、都民にした約束と矛盾がありませんか?

 石原氏 私は、地下水について非常に厳しい基準を設置したのは間違いありません。しかし、ハードルが高すぎたかも知れません。でも小池知事は基準に捕らわれず、まずは都民のことを第1に考えて豊洲への移転を実行して欲しいものだと思います。地下水にいろいろな問題があるかも知れませんが、こんなもの今の技術があれば、ろ過してポンプアウトして海に捨てたらば? 豊洲で床を掃除したり、魚を洗ったり使うわけじゃない。地下水は豊洲の建物を運用するのに、何の害があるんですか?

 -都民の側から言えば、とんでもない話ですよ。食の安全を守ることから言えば、最初から豊洲に行かなければ良かったわけです。別の選択肢ももあったはずです。今も、ポンプアップはやっているんですよ。やっていながら、地下からどんどんと新しい汚染水が出てきて、それが(環境基準値の)79倍なり100倍になっている。地下の深いところの汚染は、上の地下水を引っ張れば下から上がってくる…それが豊洲なんですよ。あなたの決断は、やはり大きな政策の間違いと言わざるを得ない。19日にたくさんの業者、消費者の方が専門家会議に駆けつけていましたけれども、大変、怒っています。「都は豊洲を環境基準値以下にすると説明した。信用できない」「もう汚染対策に860億円も使ってしまい、これからいくら使うんだ」という発言に、会場から共感の拍手もあった。私は、石原証人は、この声にこそ耳を傾けるべきだと思う。このままでは真実が明らかに出来ませんので、石原証人には真相究明まで証人尋問に応じるよう強く求め、百条委員会としても再度、石原証人の喚問を行うことを強く求めます。

 午後2時21分、騒いだとしてさらに1人の傍聴人が退廷を命じられた。【村上幸将】