安倍晋三首相の「お友達スキャンダル」が、新たな展開になった。首相の友人が理事長を務める学校法人加計学園(岡山市)の獣医学部開設計画をめぐり、文部科学省が国家戦略特区を担当する内閣府に「総理のご意向だと聞いた」と言われたとする内部文書の存在が17日、明らかになった。

 文書は学部新設をめぐる文科省と内閣府などのやりとりを記録。通常の公文書の書式と異なり、作成者や発言者の記載はない。

 ただ「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」とする文書には「これ(早期の開学)は総理のご意向だと聞いている」と記載。「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」という文書には「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」と書かれてある。

 文書を入手した民進党の玉木雄一郎衆院議員が、国会で追及したが、同党の疑惑調査チームに呼ばれた文科省の担当者らは、「確認できていない」と主張。菅義偉官房長官は会見で「怪文書みたいな文書ではないか」と指摘。首相の意向とされることを否定した。

 加計学園は国家戦略特区制度を活用し、愛媛県今治市に獣医学部新設を計画。同市は今年3月、学園に取得価格約36億円の市有地の無償譲渡と、施設整備費96億円の助成を決めている。

 理事長の加計孝太郎氏は首相と30年来の親友。ゴルフや食事も重ねる。首相の昭恵夫人が、学園の保育施設の名誉園長に就任していたことも野党の指摘で表面化。首相は3月の国会答弁で、「働きかけを受けていれば責任を取る」と述べ、森友学園問題と同様、事実だった場合の自らの責任を明言している。民進党内では、親友が関与したスキャンダルで失脚した韓国の朴槿恵前大統領になぞらえる声もある。【中山知子】

 ◆加計(かけ)学園 岡山市の学校法人。ホームページによると、1961年に法人の認可を受けた。現在の理事長は安倍晋三首相の友人。岡山県内と千葉県銚子市に計3つの大学のほか、中学と高校、認可外保育施設(神戸市)などを運営する。地域限定で規制緩和する政府の国家戦略特区を活用し、愛媛県今治市に岡山理科大の獣医学部を開設する計画が進んでいる。