犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法は、15日朝の参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。

 自民、公明両党は、本来行うべき参院法務委員会での審議・採決をすっ飛ばして、いきなり本会議で採決を行う「中間報告」というを手法を繰り出した。

 当初、野党は14日の法務委員会での強行採決を警戒していただけに、「中間報告」という与党側の動きは、寝耳に水だった。

 加計学園問題などで、安倍政権に対する野党の追及を避けたい与党は、23日に告示が迫った東京都議選(7月2日投開票)への影響も考慮し、18日までの国会会期の延長を避けたいのが本音だった。自民党の身勝手な論理を優先した奇策に、本会議場では野党から「恥を知れ!」と、激しいヤジが飛んだ。

 「中間報告」は、国会法で「特に必要があるとき」に認められており、過去に衆院4回、参院18回の例がある。ただ、よほどの理由がない限り、本来の法案審議の手順を事実上無視する手法にもなるため、永田町では「禁じ手」という認識が一般的だ。昨年末にも自民党がIR整備推進法案の際に検討したこともあるが、最終的に見送った経緯がある。

 ただ、与党が「中間報告」提案に踏み出したきっかけは、民進党など野党の国会戦略のまずさだ。13日の参院法務委員会での審議中に、金田勝年法相の問責決議案を提出。これで質疑が中断され、「野党が委員会審議を打ち切った」として、委員会での正常な法案審議・採決を飛ばす口実を与党に与え、最終的に与党の「暴走」を防げなかった。

 自民党は当初、法案採決の混乱も見越して18日までの国会会期の小幅延長を模索する動きもあったが、今国会最大の焦点と位置づけた法案の成立で、会期延長は見送られる見通しだ。【中山知子】