東京都の小池百合子知事がこれまで、「築地市場残留」を検討する指示を出していなかったことが15日、都幹部への取材で分かった。市場問題プロジェクトチームの提言では築地市場改修案が示され、多くの築地関係者が残留を訴えたが、そもそも小池氏の腹心に、市場機能の築地を残す考えはなかったことになる。

 この日行われた移転可否の判断材料を整理する「市場のあり方戦略本部」は市場機能は豊洲に移転し、築地跡地は売却せず、民間に貸すことで資金収支を改善する試算をまとめた。21年度から民間に50年間の定期借地権を貸し付ける。年160億円の収益が上がり、豊洲の赤字を穴埋めして年20億~30億円の黒字で推移すると試算した。

 しかし、年160億円は跡地全体を「事業用」「住宅用」で貸し付けた試算。都によると仮に、一部でも市場機能を残せば貸し付け面積は減り、収益も減る。さらに魚市場の「臭い」など特殊要件が発生するが試算では考慮しなかった。

 そもそも報告書は「豊洲移転時の収支試算」とされ、築地に市場機能を残す前提はない。それでも報告書には「『築地ブランド』をレガシーとして街づくりに生かす」と記された。

 会議後、築地市場存続を訴える「築地女将さん会」が都庁で会見し、小池氏への要望書を読み上げた。メンバーは「豊洲移転なら現場無視だ。魚市場がなくなったら『築地ブランド』など守れない」と怒りをあらわにした。