安倍晋三首相は28日、東京都議選の応援で「自衛隊としてもお願いしたい」と問題発言し、撤回に追い込まれた稲田朋美防衛相に、「続投」を指示した。野党の罷免要求も受け入れない構え。加計学園問題で明確な説明責任を果たさず、「秘蔵っ子」の失言をかばう首相の姿勢には、都議選を戦う現場からも不満が出始めた。首相はこの日、26日に続き2度目の都議選応援を行ったが、ヤジを受けかねない街頭は再び見送り、稲田氏発言に関する支援者への説明も一切なかった。

 安倍首相は、都議選の応援で自衛隊に言及して自民党への支持を訴えた稲田氏の続投を指示した。思想信条が自身に近い、「秘蔵っ子」。昨夏の内閣改造で防衛相に大抜てきしたが、稲田氏は自衛隊の南スーダン日報問題、過去に森友学園の訴訟を担当した問題などでの説明姿勢をめぐり、国会で何度も窮地に追い込まれた。首相はその間も稲田氏を続投させ、今回も同様の対応をみせた。

 ただ今回ばかりは事情が異なる。稲田氏の発言は、自衛隊員の政治的行為を制限した自衛隊法などに抵触する恐れもあるためだ。野党は首相に罷免を要求。与党内でも「ものを知らないにもほどがある」(関係者)の声が漏れるが、首相は依然「守り」の姿勢だ。首相には、都議選の現場からも不満が出始めている。都選出の国会議員は「逆風というより暴風雨。とばっちりを受けるのが都議選候補。たまったものではない」と漏らす。