将棋の連勝記録歴代1位の29連勝を達成した最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)と佐々木勇気五段(22)が2日、第30期竜王戦決勝トーナメント2回戦の対局中、昼食を注文した東京・千駄ケ谷の「そば処みろく庵」から夕飯も注文した。

 昼に冷やし中華(大盛り)を食べた藤井四段は、夕食に若鶏唐揚げ定食(850円)をオーダーした。骨付きの鶏から揚げが3個にキャベツの千切りとごはん、ポテトサラダとコンブ煮、つけものが、1つのお重に盛られており、みそ汁が付いている。から揚げの衣は、かじるとサクサクと音が鳴り、柔らかくて歯触りが良い。鶏肉はジューシーで、肉汁があふれてくる。

 若鶏唐揚げ定食は、名人などタイトル計3期の丸山忠久九段の「勝負めし」として知られる。同九段は、から揚げを3つ増量するオプションが定番で、将棋界では「丸山定食」として有名だ。藤井四段は、15連勝を決めた5月1日の「竜王戦」ランキング戦6組で金井恒太六段を下した際、夕食に若鶏唐揚げ定食を食べている。30連勝がかかった夜に、ゲンをかついでチョイスした可能性がある。

 一方、佐々木五段は、昼の肉豆腐定食もち入り(1050円)に続き、夜もミニ豚かつ定食(1000円)と、ボリュームのあるメニューを注文した。呼称はミニだが、他店では普通の豚カツとして提供されているくらいの大きさの豚カツが、4つに切られている。肉は赤身、脂身ともにしっかりついており、食べ応えがある。店員は午後5時57分、将棋会館に向けて出前のバイクを走らせた。

 みろく庵は1982年(昭57)創業で、当初はそば屋としてスタートした。夜には居酒屋としても営業しており、そばから定食ものまでメニューは豊富だ。全国から将棋会館を訪問するために上京した将棋ファンが、初めて出会い、親交を深める集いの場としても愛されているという。

 店の関係者は「こんなに大きな騒ぎになったのは初めてです」と“藤井フィーバー”に驚きを隠せない。これまでも将棋会館で対局する棋士の出前を受け、対局の翌日に棋士が食べたメニューを注文するファンはいたという。それが藤井四段が記録的な連勝を続けたことで、インターネットで対局が生配信され、テレビ、新聞各局が連日、藤井四段が食べたメニューまで広く報じたことで、対局当日に食べに来るファンが激増したという。

 この日、藤井四段が昼食で食べた冷やし中華は、そばが主力商品ということもあり1日に1食も出ないというが、この日は用意していた中華麺がなくなり、自家製麺機で2回、追加で打ったという。【村上幸将】