相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で障害のある入所者19人が殺害された事件から26日で1年。殺人容疑などで起訴された元職員植松聖被告(27)はいまだ「意思疎通ができない人間を安楽死させるべきだ」などと独善的な主張を続けている。「冗談じゃない-」。被告の負の主張に対し、障がい者と健常者によるプロのロックバンド「サルサガムテープ」が、爆発しそうな思いを新曲「ワンダフル世界」に乗せ、カウンターメッセージを発信している。

 00年からサルサガムテープに参加している元ザ・ブルーハーツのドラムス梶原徹也(53)は「自分も最初は障がいのあるメンバーと、どう接していいか分からなかった」と明かす。しかし、一緒にライブを続けていく内に分かってきた。「障がいのある人もない人も、当たり前に隣にいると、お互いに社会性が出てくる。これがお互いにとって大事なんだ」。

 「共生」「ノーマライゼーション」といった「概念」はあるが、社会の中でどう「実」にしていくのか。津久井やまゆり園の事件から1年。社会に変化はあったか。梶原は「追悼もあるけど、ロックン・ロールって、生きてる生命力を伝える自己表現の作業。それぞれの人が権利と楽しみを持って生きてることを強調したい。事件でネガティブな面がクローズアップされるけど、ポジティブに曲をやってる姿で、伝えられたらいいなというのはある」。

 16~52歳まで施設にいた米田は、加入当初は周囲に理解されず、ネガティブな言動も多かったという。しかし、ライブを通じて変わった。「みんなの前に出てお客さんに楽しんでもらうには、僕もきれいな格好をして見せないと。君がやなことは僕もやだから」。だから、舞台では、一番光り輝く自作の電飾付き衣装を身にまとう。

 電飾帽子をかぶり、電飾ガムテープ太鼓を打ち鳴らす米田に、フロアの客も盛り上がる。「僕たちこれだけやれるんだ。なんで分からないの? 内輪で盛り上がっても意味がないんだ。みんな叫んでほしい」。そのために、まずは音楽を聴いてほしいと思い、演奏を続けている。

 YouGoは、新曲のワンダフル世界について、「どういう人に聞いてほしいかなんて区別しない。できるだけ多くの人に聞いてほしい。そして、歌ってほしい」と話している。

 ◆サルサガムテープ 1994年、かしわ哲が神奈川県内の障害者施設で結成。99年、NHK「みんなのうた」出演。忌野清志郎とライブを行い、「ロックン・ロールの原点」と称される。03年、ミニアルバム「サルサガムテープ」に長嶋茂雄氏が参加。04年、サルサガムテープwith忌野清志郎でシングル「ONABE」を発売。フジロックにも出演。11年NPO法人ハイテンション設立。オノ・ヨーコの前でイマジンを演奏。OBには津久井やまゆり園入所者もいる。