反対派で東京中央市場労働組合の中沢誠執行委員長は8月26日、明大でのシンポジウムで「移転時期になっても築地で働き続け、どく気はない。仲間を増やす」と“座り込み”で抵抗する覚悟を語った。小池氏が無害化の約束を撤回したことが最大の理由。

 築地女将さん会の山口タイ会長も「小池さんに交換条件を出してそろそろのんだ方がいい、という意見も出てきているが、私は最後まで築地を守る」と移転に強く反対した。都知事選の出馬経験がある弁護士の宇都宮健児氏は「小池氏は業者のトップとだけ会い、なんとかしようとしている。仲卸にどっぷりつかって話すべきだ。このままでは築地の切り捨て」と断じた。

 リターン派は機能分離は可能だと主張。ある仲卸は「再開発案の中身を都は何も決めていない。それなら仲卸が主導で未来の絵を描けばいい」。小池氏は既に基本方針を発表済みで覆ることはないと踏み、合理的な戦略で臨む考えだ。

 板挟みに遭い、追い込まれる業者もいる。「都が築地再開発の具体像を何も示さないため、混乱が収まらない」と嘆いたが、その間にも移転時期決定への時間が刻々と迫っている。

 各立場が互いの動きを警戒し、不信感ばかりが募る不幸せな状況。「この分裂は、まとまりっこないよ…」「役人が何もしなかったからこうなった」と複数の仲卸。都庁にこの悲鳴が聞こえているだろうか。【三須一紀】

 ◆豊洲市場の移転問題 築地市場が老朽化し手狭になったことから東京都は01年、江東区豊洲地区にある東京ガス工場跡地へ移転を決定。土壌から高濃度のベンゼンなど有害物質が見つかり、都は土壌汚染対策を実施。豊洲へ昨年11月移転を決めたが、小池知事が移転を延期していた。