衆院選公示を10日に控え8日、東京・内幸町の日本記者クラブで党首討論が行われ、自民党の安倍晋三首相は自公で過半数ギリギリでも安倍政権を運営していく考えを示した。永田町周辺では50議席減なら退陣とささやかれていることを聞かれ「世界を見ても過半数なら政権を執る。郵政選挙も過半数だった」と述べた。

 森友・加計問題について鍵を握る安倍昭恵夫人、加計孝太郎氏の参考人招致はあるかとの問いには「妻については私が代わりに話している。加計氏はご本人が決めること」と語り「私が関与したとは誰1人言っていない。あの前川(喜平)さんですらだ」と否定した。結果的に首相の友人が優遇された点を突っ込まれると「(森友学園の)籠池さんは友人ではない」と正面から答えなかった。

 共産党の志位和夫委員長が、ノーベル平和賞に「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が選ばれたことを受け、日本も核兵器禁止条約に賛同すべきと指摘。安倍氏は「今、北朝鮮の危機がある中、核の抑止力を放棄しては日本は守れない」と否定した。

 全ての選択肢があるとする米国方針を支持する政府に志位氏は「先制攻撃は米国にやめさせるべき」と問いただすも、安倍氏は「北朝鮮にはこれまで何度も約束をほごにされた。時間を稼がれ、その間に核開発をしてきた。もうだまされるわけにいかない。核保有国に日本が脅されることは初めてのことだ」と強硬な姿勢は崩さなかった。

 希望の党の小池百合子代表は、政権選択選挙にもかかわらずいまだに総理候補を挙げないことに「フェアじゃない」と問われたが「新しくできたばかりの党。選挙後に見極めたい」と答えなかった。希望が自民党石破茂氏を首班指名するとの臆測が流れているが「石破さんは今、自民党ですから…」と否定気味に語った。

 公約に「2030年までに原発ゼロ」と書いたが、「核燃料サイクルもやめるのか」と聞かれ「原子力の技術を残していくのも必要。全部なくすのは技術的にどうか」と、原発以外の原子力技術については残していく考えを示した。

 豊洲問題や、民進前原代表と密室で決めた合流についてブラックボックスと突っ込まれ「事実と違う。政策判断は公開できない。それ以外は情報公開する」と反論。公約でベーシックインカムの導入を挙げているが「財源は」と問われたが明確な回答はなかった。

 都政新報が小池都政1年の評価を都職員にアンケートしたところ46点(舛添氏は1期目前半で63点、石原氏は1期目平均71点)と低く、二足のわらじで中途半端との批判を受けたが「1年目は都の負の遺産を変えてきた。2年目は都庁の方も納得すると思う」と都側を批判した。

 立憲民主党の枝野幸男代表は、希望に「丸ごと合流」できなかった点を「脇が甘い」と指摘されたが「(前原)代表の意見を信じるのは組織人として当たり前だ」と反論した。

 憲法9条に自衛隊を明記する安倍案については明確に「違憲」と主張。安保法制で集団的自衛権を認めている現状で今、自衛隊を書き込めば集団的自衛権を容認することとなり「専守防衛を超えており違憲となる」との考えを示した。

 自衛隊は違憲との立場を取る共産党の志位委員長は、もし政権に参加した場合は、しばらくの間は合憲との立場を取るという。諸外国との関係が「圧倒的に平和的環境に成熟した後に、自衛隊を変えていく」とした。記者に「昔の共産党とはずいぶん変わりましたね」と突っ込まれると「理想はあるが、それは国民に問いながら、時代の発展とともに変えるところは変える」と柔軟な姿勢を見せた。【三須一紀】