安倍晋三首相への事実上の信任投票となる第48回衆院選は明日10日、公示される。全選挙区の最新情勢を、政治ジャーナリストの角谷浩一氏(56)が分析した。首相が勝敗ラインに掲げ、甘いとの指摘もある「自公で過半数の233議席」はクリアしても、自民単独で過半数に達しないケースも想定されるという。小池百合子都知事率いる「希望の党」は躍進とはいかず、立憲民主党は健闘がみられる。今後情勢は変わる可能性もあるが、有権者の1票が今後の政治を決める。

 国民の関心は、直前に起きた民進党解体と寄せ集め右派政党・希望の党の結党で翻弄(ほんろう)されたが、本来は安倍首相の森友・加計疑惑隠しともいわれた解散だった。ところが、追及の急先鋒(せんぽう)だった民進党が崩壊。親自民党政党・希望の党に変質したため、本来の野党は立憲民主党、社民党、共産党になり、自民党、公明党、希望の党、日本のこころ、日本維新の会との対立が鮮明化した。だがそれは政界の都合でしかなく、有権者は混乱している。

 投票率にもよるが、54~56%程度が見込めると、国民はどんな反応を示すか。結党当時は政権奪取の勢いだった希望の党は失速感が強く、公認辞退も相次いでいる。また、当初は2大保守を目指すとしていたのに、途中から自民党との連立を示唆し始め有権者をしらけさせた。「どこに投票していいのか分からない」という“投票難民”が増え、投票先が不明瞭になる。

 首都圏や、愛知など民進党が強かったエリアでは強さを発揮するが、都市部以外では小池代表の威力は効果を発揮できない。そうなると、自民党が底力を発揮する。希望の党と接戦の選挙区も多いが、結果的には競り勝つ可能性が高い。

 ただ、それが政権への白紙委任状ではないことは肝に銘じるべきだ。比例代表では自民党と書く有権者の数が減るのではないか。

 当初の野党共闘は、選挙区によっては立憲民主党や無所属議員が引き継いでいるが、民進党が割れ野党共闘が崩れたところは、乱立して効果は半減だ。その分自民党が漁夫の利を得たといえる。一方、立憲民主党は選挙戦が進むにつれ、勢いが増す傾向。この流れは全国で見られる。今の数字よりも、躍進する可能性が高い。

 公明党も堅調な票固め。共産党は野党共闘が壊れた後も不断の努力が功を奏し、比例での躍進が望まれる。最後に後継指名せずに引退を表明した広島6区の大物・亀井静香だが、亀井票は希望の元職に流れるようだ。選挙後の枠組みは興味深いが、こんな形での選挙戦になると有権者は想像していなかったはずだ。(政治ジャーナリスト)

 ◆角谷浩一(かくたに・こういち)1961年(昭36)4月3日、神奈川県生まれ。日大卒。テレビ朝日報道局などを経て現職。永田町や霞が関に幅広い人脈を持つ。現在、テレビ朝日系「ワイド!スクランブル」、TBS系「ゴゴスマ」などでコメンテーターを務める。映画評論家の顔も持ち、年間250本の映画を見る。

 ※各選挙区の詳細予想は9日付の日刊スポーツ社会面に掲載しています。