安倍晋三首相への事実上の信任投票となる第48回衆院選は明日10日、公示される。全選挙区の最新情勢を、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏(59)が分析した。首相が勝敗ラインに掲げ、甘いとの指摘もある「自公で過半数の233議席」はクリアしても、自民単独で過半数に達しないケースも想定されるという。小池百合子都知事率いる「希望の党」は躍進とはいかず、立憲民主党は健闘がみられる。今後情勢は変わる可能性もあるが、有権者の1票が今後の政治を決める。

 安倍首相が選挙前に掲げた「自公合わせて過半数の233」という勝敗ライン。最初は、「低く設定して、確実に政権が存続できるようにするための数字」(野党幹部)などと言われたが、それがリアルなラインになってきた。公示前の取材や各党の情勢調査などから、自民党は苦戦している。

 希望の党への合流をめぐって民進党が分裂し、立憲民主党が旗揚げ。しかし、この混迷は、選挙全体の構図を「自公」、保守系野党の「希望・維新」、リベラル系の「立憲民主、共産・社民」という3極に分け、有権者は政策的な選択をしやすくなったとも言える。

 いまのところ自公で過半数に達したとしても、自民党単独では過半数を切る可能性も出ている。予測最少値の213となれば、自公過半数もギリギリ。首相指名で希望の党など野党が連携して、「自民党内の、たとえば石破茂元地方創生相や野田聖子総務相に触手を伸ばし、野党の首相候補に担ぎ出すといった政変になる」(自民党幹部)といった話も…。さらに、50議席以上の減となれば、党内政局にもなり「安倍首相おろし」に火が付く。

 希望の党は地域差が出そうだ。小池百合子代表のお膝元の東京や都市部では、小選挙区・比例ともに伸ばしそうだが、北海道、東北、四国、九州などは比例のみか。また、政策的に見て結局自民党と連携するのではないかといった疑念は残っており、今後の小池代表の言質次第で、反自民票を集められるかどうかが決まりそうだ。

 一方、苦渋の新党結成となった立憲民主党は、これまでの枠組みの共産・社民との連携が進み、リベラル票の行き先として健闘をみせている。

 通常、選挙は事前の運動量が重要で、「公示後はもはや終盤戦」などと言われているが、今回は候補も公約も出そろったのが直前。急な解散を仕掛けた安倍首相も、再編でもたついた野党も、どうも透けて見えるのは「勝てるかどうか」を優先した言動。国民はそこに惑わされず、政策重視の「有権者眼」を発揮しよう。(政治ジャーナリスト)

 ◆鈴木哲夫(すずき・てつお)1958年、福岡県生まれ。早大卒。テレビ西日本、フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長など歴任。テレビ、ラジオのコメンテーターでも活躍。近著に「東京都政の真実」(イーストプレス)「戦争を知っている最後の政治家」(ブックマン社)。

 ※各選挙区の詳細予想は9日付の日刊スポーツ社会面に掲載しています。