福島県富岡町の米農家渡辺伸さん(57)が9日、東京電力福島第1原発事故による避難指示解除後初となる7年ぶりの稲刈りを行った。事故前の作付面積の1割にも満たない60アールの田んぼだが、手塩にかけただけあってずっしりと頭をたれた稲穂に「満足できそうな感じだ」と笑みをもらした。

 4月の避難指示解除前は居住制限区域だった自宅前の水田。昨年春までの農地除染では表土を5センチはぎ取られた。その影響で掘り起こされた石を1年かけて丁寧に拾い、ようやく今年5月に田植えにこぎ着けた。事故前は必要なかったイノシシよけの電気柵も効果を発揮。風に揺れる稲穂が金色に輝く秋の風景が、7年ぶりによみがえった。「最初は米になんのかなって不安だった。やってみっと、なんとかなんだなぁ」。

 町では今年、地元農家の組合と渡辺さんを含む個人農家3人が実証栽培を実施。来年はさらに1~2人が加わる見通しだ。