「ひふみん」こと、将棋棋士の加藤一二三(ひふみ)九段(77)が、あなたのお悩み相談に答えます。

 14歳でプロになり、今年6月に引退するまで63年間、勝負の世界に身を置いてきました。敬虔(けいけん)なキリスト教徒として30歳で、洗礼も受けています。生きる厳しさと、聖書の教えをベースに、指導対局ならぬ、人生指南をしてくれます。毎週水曜日に掲載します。

<質問>

 大学を卒業して以来、ずっと正社員にはなったことがありません。派遣やアルバイトを繰り返してきました。1年前に働き始めた勤務先で、給料が1回ももらえておりません。母親と同居しており、貯金は20万円ほどあります。母の年金に頼るわけにはいかず、この先、生活ができなくなる可能性があります。どうしたら良いでしょうか?(37歳 アルバイト 男性 長野県)

<回答>

 プロ棋士として、現役時代に対局料や賞金を月々きちんともらっていた私としては、想像がつきません。決まった通りに収入が入るので、このような例に接したことがありませんから。この世の中にこんなことってあるんですか? 労働の対価として賃金(給料)をもらうのが当たり前だと思っているのですが。

 会社が営業している限りは、賃金が払えないなんてあり得ないです。ふだん、社員が必要経費としている交通費なんかはどうしているのでしょうか。推察するしかないですが、本当に会社が悲惨な状況なのでしょうか。遅配という形でも構わないので、支払ってもらうべきです。もらうべきものをしっかりもらわなければ、生活していけないでしょうから。

 知人から聞きましたが、東京都の場合は、労働相談センターというところがあり、賃金や退職金といった労働条件や労使関係など、全般にわたり相談に応じてくれるとのことです。恐らくお住まいの近くにも同じように労働者の味方になってくれる相談所があるのではないでしょうか。事前に連絡として、相談に行く際に、今のところで働くに当たって交わした契約書など、必要な書類を聞いてそろえて、持参することをお勧めします。

 もし、こんなことがたびたび起こるようなら、見切り時です。大変かもしれませんが、転職をお考えになった方がいいのかもしれません。

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