来日中のトランプ米大統領は6日、東京・赤坂の迎賓館で安倍晋三首相と会談し、首相への強い信頼を示す一方、ビジネスマンらしい「営業外交」を展開するしたたかさを見せた。日本に一層の市場開放を求めた上で、「米国の防衛装備品を日本は大量に買うべきだ」と、会見の場で指摘。首相も応じる構えを示さざるを得なかった。一方、トランプ氏は北朝鮮による拉致被害者や家族と面会し、解決への協力を明言した。トランプ氏夫妻はきょう7日、日本を離れる。

 トランプ氏がついに、ビジネス界出身大統領としての「本音」を解禁した。

 初日は、松山英樹を交えた接待ゴルフに臨み、但馬牛のステーキも堪能。首相の「おもてなし」に終日上機嫌だったが、日米首脳会談に先立つ会合で「日本市場は開かれていない」と指摘。「米国は、日本に対する巨額の貿易赤字に苦しんできた」と述べ、日本の一層の市場開放を求めた。かねての持論でもあり、日本政府側は日米間の自由貿易協定(FTA)を持ち出されることを警戒。トランプ氏は昼食の際にも、北朝鮮問題と合わせて貿易問題をテーマにすると述べた。

 ただ約30分の会談でトランプ氏は、貿易不均衡には触れたが、FTAには言及しなかった。共同会見では、トランプ氏に先立ち発言した安倍首相が日本独自の追加制裁の発動を表明するなど大半を北朝鮮問題に割いたが、経済については「2国間で引き続き議論を重ねることで一致した」などと触れただけだった。

 一方、トランプ氏は北朝鮮問題に続き、最後は経済にシフト。「日本と公正で互恵的な貿易関係をつくる」と述べ、質疑応答で「日本は今後、米国のさまざまな防衛装備品を買ってくれるだろう。そうすれば上空でミサイルを撃ち落とせる。そうするべきだ。雇用も安全も生まれる」。トランプ氏の営業トークに、首相は、米製装備品の購入実態を示した上で、「量も質も拡充する上で買うことになるだろう」と応じた。

 経済では首相にくぎを刺したトランプ氏だが、首相との信頼関係は猛アピールした。首相が昨年の大統領選直後、真っ先に自身と面会してくれたことが、現在の蜜月関係に直結したと述べ、「本当に楽しい旅だ。あなたと長い時間を過ごせてよかった」と述べた。首相が圧勝した先月の衆院選にも触れ「偉大な成功を祝いたい。楽勝だったのかもしれないが」。長女イバンカさんへのもてなしにも謝意を示し、家族ぐるみの付き合いをアピールした。

 6日夜は迎賓館で首相主催の夕食会に臨み、全日程を終了。7日、次の訪問地の韓国へ出発する。【中山知子】