吉本興業の元お笑い芸人という異色の警察官を座長とする「劇団」が大阪府警黒山署(堺市美原区)に誕生し、高齢者に詐欺の手口など笑いを交えて紹介する寸劇が好評だ。

 10月上旬、堺市東区内で開かれた防犯関係の集会。「架空請求詐欺って知ってますか? 大阪府下だけ特殊詐欺は9月末までで1200件以上です。被害額は27億円以上なんです」。元お笑い芸人の高道大輔巡査長(29)が解説すると、相方役の署員が「27億円といえばアンジェリーナ・ジョリーの家と同じ額ですな~」とボケる。高道巡査長が「大豪邸ですな。ブラッド・ピットの嫁さんですな」とボケ返すと、笑いが起こった。この日は特殊詐欺の寸劇を約15分間、披露した。「浪速のお笑いポリス」の熱演に60代男性は「複雑な事件を楽しく理解できた」と満足げだ。

 「黒山劇団」は4月に結成。高道巡査長が座長となり、若手署員6人のメンバーが加わった。5月に市民向けに寸劇を初披露し、これまで3回の公演を重ねてきた。高道巡査長は大学4年だった09年、高校時代の同級生と一緒にタレント養成学校・吉本総合芸能学院(NSC)に入門。お笑いコンビ「中張又張(なかはりまたはり)」を結成した。ライブを中心に活動していたが、13年夏に転機を迎えた。

 仕事帰り、大阪市中央区の道頓堀の近くで男にからまれていた女性を発見。駆け付けて女性を逃がしたが、逆恨みした男に袋だたきにされた。「とても悔しかった」。悩んだ末、警察官になって町の安全を守りたいと思うように。13年末にコンビを解散し、警察官になるための勉強や体力づくりに打ち込んだ。大阪府警の「一芸に秀でた人材」を重視する自己推薦枠に志願し、15年に採用された。

 元相方の白井伸大はお笑いコンビ大自然で活躍中だ。解散以降、相方とは会っていない。「お互いが仕事で納得できるところまで来たら再会しよう」。高道座長の目標は刑事になることだ。【松浦隆司】

 ◆中張又張(なかはりまたはり) ともに大阪府八尾市出身で高校時代の同級生だった高道大輔と白井伸大が10年にコンビ結成。吉本総合芸能学院(NSC)32期生。モデル経験のある身長186センチの高道がツッコミを担当。コントが得意なコンビとしてテレビに出演し若い世代に人気があったが、13年に解散した。白井は15年に沖縄出身の里龍之介とコンビ「大自然」を結成した。