将棋の羽生善治棋聖(47)が5日、「永世7冠」の偉業を達成した。第30期竜王戦7番勝負第5局(鹿児島県指宿市「指宿白水館」)に挑戦し、87手で渡辺明竜王(33)を下した。対戦成績を4勝1敗としてタイトルを奪還。通算7期目の竜王獲得となり、「永世竜王」の条件(連続5期または通算7期)を満たした。他の6冠(名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖)はすでに「永世」称号を持っており、将棋界史上初の永世7冠となった。その羽生の強さを「ひふみん」こと、加藤一二三・九段(77)が解説する。

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 私の現役時代、羽生さんとの対戦成績は6勝14敗。最初は4勝2敗でしたが、徐々に離されました。その強さの特徴は3つあります。

 (1)レパートリーの広さ 私なら矢倉と棒銀、大山先生(故大山康晴15世名人)なら振り飛車といったように、普通は持っても2つくらい。羽生さんは5つくらいある。居飛車党でありながら、振り飛車もこなす。いろいろな作戦で満点に近い指し方ができる。

 (2)劣勢になってもひっくり返す能力がある 負けそうでも、どんな進行になったらひっくり返せるか判断できる着想が素晴らしい。時には「飛車の頭に香」とか「玉の腹に金」など、その手だけ直感で判断したら、多くのベテラン高段者やタイトル獲得経験者でも「疑問」とか「破門になる手」とされますが、羽生さんはその先の逆転まで読んでいる。

 (3)素晴らしい手を絶えず研究している 私とのNHK杯(1988年4回戦)で羽生さんの先手5二銀という手が伝説のように言われていますが、その前に先手4八玉としたのが妙手で、天才ぶりを目の当たりにしました。90年代前半からパソコンで棋譜研究をし始めた先駆者的存在ですが、研さんを怠らず、新しい指し手を今も研究している。

 (2)と(3)を合わせて「ハブマジック」と言うのでしょう。

 19歳で竜王になり、永世7冠になるまで長い道のりだったでしょう。平成の世の中を休みなくずっとトップで走り続け、いかなる時もいい将棋を指し続けた覇者。100期目のタイトルは時間の問題でしょう。最大級の賛辞を贈ります。