将棋界初の「永世7冠」を達成した羽生善治竜王(47)と、囲碁で7冠独占を2度果たした井山裕太氏(28)への国民栄誉賞授与が正式に決まった。政府が5日、閣議決定した。羽生は昨年12月、通算7期目となる竜王のタイトルを獲得して永世7冠を達成。井山は昨年10月に名人位を奪取し、自身2度目となる7冠独占の快挙を果たした。将棋は指し初め式、囲碁は打ち初め式と、棋士にとって「仕事始め」に当たるこの日、囲碁・将棋界は第一人者2人の同時受賞に沸いた。授与式は2月13日、首相官邸で行われる。

 羽生は午後4時から東京・将棋会館で記者会見を行った。「名誉ある賞を受賞し、驚きと同時にうれしく思っている。長年の将棋界の歴史の積み重ねも評価された」と、喜びをかみしめた。

 しかも、8年前から交流がある井山と囲碁将棋界同時の初受賞。「井山さんが20歳のころから交流がある。現在進行形で囲碁の歴史を変えている棋士。同じ日にいただけたというのも、棋士として誇りになります」と話した。

 この日は、午前11時から将棋会館近くの鳩森八幡神社で行われた「将棋堂祈願祭」に出席。その後、同会館で「指し初め式」に臨み、恒例の仕事始めをこなした。

 96年3月に元女優の理恵夫人と結婚して20年以上。「棋士の対局は長丁場で体力を使う。食事の面で気をつけてもらっている。タイトル戦で着る和服の準備とか、きめ細かく神経を使ってもらっている。ありがたい存在」と感謝した。

 85年12月、史上3人目の中学生棋士としてデビューし、19歳で初タイトルとなる竜王を獲得した。以来、昨年12月の竜王まで獲得タイトルは計99期。「変化が速い世界で今の潮流に乗り損ねると取り残されてしまう。トップ集団につけて切磋琢磨(せっさたくま)し、その時の流行、最先端の物を取り入れながら、前に進む。失敗しても挑戦する気持ちを忘れないでいたい」と、将棋界でトップを走り続けるこつを明かした。

 現在1391勝563敗。タイトル通算100期獲得はもちろん、「1400勝が当面の目標」と言う。その先には、故大山康晴15世名人が持つ1433勝という通算最多勝利を上回るという、大目標も控えている。【赤塚辰浩】