-お互いの印象 

 羽生 7冠を全部制覇し、現在進行形で囲碁の歴史をつくっている人。その方と同じタイミングで名誉ある賞をいただけてうれしい。これから先、どんな記録をつくってくれるか、1ファンとして楽しみにしている。

 井山 羽生先生は私が囲碁を始めた時に7冠になられた。将棋界を超えて、皆さんに夢や希望を与えられた方。同じ棋士として尊敬という言葉では表せない。先を行く先生がいることは心強い。自分もそうあれたらいいなと思う。

 -囲碁の普及について

 井山 AIの登場もあり、内容的にも変わってきている時期。今まで自分たちが正しいと思ってやってきたことが、どうなのかという時期にもさしかかっている。自分も、「正解」と自信を持って打てる手はほとんどない。いろんな面でもう少し成長したい。世界のトップ棋士と戦っていると、自分にないものを持っていると感じる。自分がまず戦い、世界と(対局)することが、そのことにつながれば、と思う。

 -官邸訪問の感想

 羽生 この賞をいただくことが決まって反響が大きく、大変な賞を賞をいただくことになったと実感している。表彰の経験はかなりあるが、きょうはちょっと緊張しました(笑い)

 井山 賞をいただけることを聞いてから、なかなか実感がわかない。今日までたくさん対局もあり、なかなか考える余裕もなかったが、今日を迎えることができ、安倍総理から賞をいただけた時、何とも言えない、リアリティーがないというか…。普段はなかなか経験できないことで、大変ありがたいことだと思った。意識しすぎずに、自分のペースでやっていきたい。

 -お互いを分析すると

 羽生 独創的な手と、結果を両立させることを、長年続けているところが驚きでもあるし、いちばん大きな強さでもある。

 井山 向上心、チャレンジする姿勢を、常に持たれている。そこが本当にすごいなと思うし、自分もそうあれたら、と思う。

 -若い世代へのメッセージ

 羽生 将棋の世界は、早いサイクルで若い人たちが出てきている。新しい人たちが出てくる可能性は常に存在していると考えているし、そういう人たちがたくさん出てくることが、活気や歴史的な継続につながると思う。

 井山 若手の成長は、最近著しい。自分も、下の世代と戦うことも増えている。戦う方は大変な面もあるが、日本囲碁界としては楽しくみている。世界を見た時、そういう人たちが出てきてくれることは喜ばしい。先頭に立って引っぱっていけるよう、自分もさらに努力したい。

 -不調をどう乗り越えるのか

 羽生 普通に実力(が理由)という時もある。その時は、次の機会をうかがうようにしている。やっていることは間違っていないが、勝ちにつながっていない時は、気持ちを切り替えてモチベーションが下がらないようにしている。

 井山 あまり1つの勝ち負けに、こだわりすぎないようにしている。負けるからには原因がある。反省を怠ってはならない。負けた時は特にそうだが、(負けが)長く続かないよう、次に向かっていく。一喜一憂しないようにというのが重要なのかなと思う。

 -お互いに似ているところ、違うところは

 羽生 棋士としてデビューし、駆け上がるプロセスは、非常に似た時期に似たことを成し遂げていく点では、共通しているところがかなりあるが、井山さんは私の記録よりもさらに、すごいことを成し遂げていく感じがある。人がなかなか思いつかないような独創的な手を指し続けるのは、私にはないところ、そこはちょっと違う。

 井山 これだけのことを成し遂げても型にはまらず、常に新しいものに挑戦している姿は、私もそうありたいと思っているので、そうあり続けている姿は本当に自分の理想。似ているというより、自分もそうありたいと思う。