【ソウル18日=村上幸将】平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)が開催中の韓国では、金正恩・朝鮮労働党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)氏ら北朝鮮の高官代表団が12年ぶりに訪韓したことが連日、メディアで報じられ、議論されている。「ほほえみ外交」との批判もある北朝鮮外交に接する中、世論調査では、与正氏が金一族として初めて訪韓したことについて、50%以上が「良かった」と答えたという。韓国社会の反応を取材した。

 韓国の国民は、金与正氏が見せた北朝鮮の「新たな顔」に強い関心を寄せている。テレビ各局は、高官代表団が11日に帰国後も北朝鮮の反応などを連日報じ、文在寅大統領ら政府高官と接触、会談した場面の映像を基に、与正氏の訪韓の狙い、どういう人物かについて検証を重ねている。

 インターネット上でも、顎を突き出し見詰める与正氏の写真が大反響で、シンプルな服装とナチュラルメークに好感を持ったとの声が多い。母の高英姫氏と比較し「そっくり」「母の方がきれい」などの声も。スポーツ朝鮮電子版は母娘の写真を並べ「金与正氏がネットで激熱」と報じた。北朝鮮代表団が7日、12年ぶりに韓国入りするまでは「金正恩は何を考えているか分からず五輪も不安」などの声が多かったが、世論は思わぬ“アイドル”の出現に軟化した。

 ニュースサイト「デイリアン」が1035人を対象に行った世論調査でも、「金与正氏が訪韓して良かったか?」との質問に、53・1%が「良かった」と答え、「良くない」の28・2%、「分からない」の18・7%を大きく上回った。年齢別で「良かった」の割合が最も高いのは40代で65・7%、50代で53・4%、朝鮮戦争を経験している60代から上の世代も44・1%だった。一方「良くない」の割合は、20代が32・5%、30代では59・2%と、若い世代の方が高かった。

 14日のアイスホッケー女子「日本対コリア」の後、韓国人の反応を取材し、世論調査に近い感触を得た。「われらは1つ」のボードを掲げた50代男性は「統一を願う。対話の姿勢で平和的に解決すれば」と期待した。一方、中学3年生の少女3人組は、2人が統一に賛成で1人は反対と割れた。反対の少女は「北と統一したら生活が不便になりそう」と不安を訴えた。

 北朝鮮が平昌五輪を政治利用し、「平壌五輪にした」との批判は韓国内にもある。東亜日報は、朝鮮労働党中央委員会の機関紙「労働新聞」が、10日から4日連続で南北統一問題を1面で報じたことを「珍しい」と前向きに捉えつつも、「金正恩が本当に交流したいのか、国際社会の圧力から逃れたいだけなのか、真意は測りかねる」とも報じた。韓国は、揺れている。