東日本大震災後に開局した臨時災害放送局(臨災FM)が、今月で全て閉局する。岩手、宮城、福島の3県に26局が誕生し、被災者に支援情報や生活情報を伝えてきたが、最後に残ったのは3局。岩手県陸前高田市の「陸前高田災害FM」が16日、福島県南相馬市の「南相馬ひばりエフエム」が25日、富岡町の「おだがいさまFM」が30日、放送を終える。

 26局の中でも、富岡町の「おだがいさまFM」は世界に例のない放送局だった。被災自治体が総務省に申請し、設置する臨災FMは通常、市町村庁舎内に設けられる。福島第1原発事故で全町避難した富岡町の「おだがいさまFM」は、避難先の郡山市のビッグパレットのロビーに11年5月27日、ゲリラ的に誕生した。国の許可は得ておらず、段ボールの手作りスタジオ。「おたがいさま」ではなく、富岡なまりで「おだがいさま」と濁った。

 「避難先での開局は前例がありませんでした」(富岡町社会福祉協議会の猪狩隆事務局長)。

 ビッグパレット閉鎖後は、郡山市の仮設住宅にスタジオを設置し、国の許可も受けて朝、昼、晩と放送を続けた。しかし、全町避難が続く間に、1万6000人いた町民は全国にちりぢりになった。郡山市以外でも放送が聴けるようにと、町は希望した3800世帯にタブレット端末を配布。しかし昨年4月1日、避難指示が解除され、国の補助金(約6500万円)も打ち切られ、タブレットでの聴取はできなくなった。

 町はスマホのアプリを使ってFMを聴けるようにしたが、「まだスマホを持っていない人も多いし、持っていたとしても、年配の方はアプリの使い方が分からないんですよね」と、メインパーソナリティーの佐藤正彦さん。被災者に寄り添うことが目的の臨災FMが、誰でも聴くことができなくなるジレンマ。町は一定の役割を終えたとして、3月末の閉局を決めた。

 東北に誕生した26局のうち岩手県宮古市、大船渡市、宮城県気仙沼市、大崎市、名取市の5局はコミュニティーFMへ移行した。しかし、富岡では難しかった。「避難指示が解除されて富岡に戻ったのは429人です。いわき市に5925人、郡山市に2426人、県外に2785人が生活しています。エリアを考えると、コミュニティーFMは難しい。(全町避難)7年は長過ぎました」(猪狩事務局長)。

 取材、編集、パーソナリティーと何役もこなしてきた久保田彩乃さんは「寂しいけど、次の1歩を踏み出す時期かな」と話す。町は4月以降、民放ラジオの番組を買い取って、情報発信することを検討している。【中嶋文明】