森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、「最終責任者」とされる佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官(60)の証人喚問が急転直下、実現する見通しになった。否定的だった自民党が容認に転じた。財務省では、佐川氏を突き放すような空気が拡大。後任の理財局長、太田充氏は「佐川氏の関与の度合いは大きい」と明言した。安倍晋三首相や麻生太郎財務相は、あらためて関与を否定。真相解明が進まない中、佐川氏1人に責任を押しつける流れが顕著になってきた。

 実現困難とみられた佐川氏の国会招致が、来週にも行われることになった。証人喚問を求めてきた立憲民主党の福山哲郎幹事長は、自民党の二階俊博幹事長との電話会談で、二階氏が「必要があれば(国会招致を)検討する」「そう(証人喚問と)取ってもらって結構だ」と、証人喚問容認の姿勢を示したと明かした。

 野党は今後、衆参両院で森友問題の集中審議を経て、佐川氏の証人喚問につなげる方針。改ざん前の文書から名前がすべて削除され、疑惑解明に証言が欠かせない首相の昭恵夫人の証人喚問も引き続き求めていくが、自民党はこちらは明確に拒否する構えだ。

 改ざん問題の背景について、財務省側は当時理財局長だった佐川氏の国会答弁に合わせるため、一部の理財局職員が行ったと説明。麻生氏は佐川氏を何度も「最終責任者」と呼んだ。そのため「証人喚問で最終責任者が語ることに意味がある」(与党関係者)。ただ、このままズルズル野党の求めを拒否すれば、国民の反発を増幅しかねない。そんな危機感が判断を後押ししたのが、実情のようだ。

 佐川氏は国税庁長官辞任の会見時、大阪地検の捜査を理由に、改ざんの指示など肝心な点で発言を控えた。うそをつけば偽証罪に問われる証人喚問で、どこまで真相解明につながるのか。「喚問ショー」で終わる可能性も否定できない。

 財務省では、そんな佐川氏を突き放す空気が漂う。太田充理財局長は参院予算委員会で、改ざんに佐川氏の関与がないと言えるかと問われ「当時の理財局トップは佐川氏。国会で答弁していたのも佐川氏。佐川氏の関与の度合いは、大きかったと思う」と明言。「自分の答弁が誤解を招かないよう決裁書を書き換えることは、私の中では結びつかない。正直、私は理解できない」とも踏み込んだ。

 昨年2月の森友問題発覚後、佐川氏は「資料はすべて廃棄」などと強弁を続けたが、今となっては「虚偽答弁」の疑いが明白。首相や麻生氏が関与を否定する中、唯一、責任が明確な立場でもある。近畿財務局職員の自殺が表面化した9日、詰め腹を切らされる形で辞任に追い込まれた。首相の責任に直結する昭恵夫人を、与党が全力で守るのとは対照的に、佐川氏の四面楚歌(そか)ぶりが際立ってきた。【中山知子】