「今日ね、今日ね、抱きしめていい?」「胸触っていい?」など、「週刊新潮」で女性記者へのセクハラ疑惑を報じられた福田淳一財務事務次官が16日、「このようなやりとりはしたことはない」と全面否定した。「名誉毀損(きそん)に当たる」として提訴の準備を進めているという。新潮社は「記事は全て事実に基づいたもの」としており、財務省は記者クラブ加盟各社に協力を呼びかける異例の事態となっている。
麻生財務相が「事実ならセクハラという意味ではアウト」と言及し、自民党幹部からは「辞任は避けられない」と見放す発言が出ていた福田氏が、疑惑を全面否定した。
財務省はこの日、矢野康治官房長らが行った福田氏に対する聞き取り調査の結果を公表。福田氏は「女性記者との間でこのようなやりとりをしたことはない」「音声データによれば、かなりにぎやかな店のようであるが、そのような店で女性記者と会食をした覚えもない」と否定した。
「女性が赤面してしまうような卑猥(ひわい)な発言を連発」したとされる4月6日の会合については、女性とともに同席していた上司から「『そのような事実はなかったし、当該女性も同様の見解である』との連絡をいただいている」としている。
音声データのような発言を普段しているかどうかについては「女性が接客をしているようなお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある」としたが、女性記者に対してはした認識はないと否定。女性記者の「心当たりを問われても答えようがない」としている。
福田氏は「私への名誉毀損に当たる」として、新潮社を提訴する準備を進めているとしているが、「週刊新潮」は財務省の発表を受け「記事は全て事実に基づいたものです。週刊新潮の見解は4月19日発売の次号に掲載いたします」と編集部のコメントを発表した。
新潮との真っ向対決に、財務省では「外部の弁護士に委託して引き続き福田次官への調査を続ける」と説明。福田氏の聴取だけでは事実関係の解明は困難だとして、記者クラブ加盟各社に対し、「週刊誌報道に示されたようなやりとりをした女性記者がいらっしゃれば調査への協力をお願いしたい」「協力いただける場合は(弁護士)事務所に直接連絡いただきたい」と要請した。
森友学園問題で辞任した佐川宣寿前国税庁長官と同期で「呪われた82年組」と言われた福田氏の反撃で、事態はクラブへの調査協力要請という前代未聞の展開になってきた。
<福田氏コメント要旨>
(1)新潮の報道 報道では、真面目に質問する「財務省担当の女性記者」に対し悪ふざけの回答をするやりとりがあるが、私(福田氏)は女性記者とこのようなやりとりをしたことはない。音声データだとかなりにぎやかな店のようだが、そのような店で女性記者と会食した覚えもない。
(2)心当たりは 業務時間終了後、男性、女性を問わずに記者と会食に行くことはあるが、女性記者との間で、週刊誌報道に記載されているようなやりとりをしたことはなく、心当たりを問われても答えようがない。
(3)普段の言動 業務時間終了後、時には女性が接客をしている店に行き、店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある。しかし、女性記者に対して、不快に感じるようなセクハラに該当する発言をしたとの認識はない。
(4)6日の会食 4月6日の会食で、(報道で)「同席した民間企業の女性が赤面してしまうようなひわいな発言を連発」とされたが、女性と同席した上司から「そのような事実はなかったし、女性も同様の見解」との連絡をもらっている。
(5)自身の進退 週刊誌報道は事実と異なるもので、名誉毀損(きそん)に当たるため、新潮社を提訴すべく、準備を進めている。国民の皆さまから不信を招き、誠に申し訳ない。反省の上、緊張感を持って職務に取り組んでいきたい。
<福田次官セクハラ疑惑>
◆12日 この日発売の「週刊新潮」で、複数の女性記者に対するセクハラ発言をしたと報じられる。
◆13日 同誌ホームページに、福田氏のものとされるセクハラ発言の音声データが公開される。男性が「おっぱい触っていい?」などと話している。麻生財務相は「事実なら、セクハラという意味ではアウトだ」と発言。
◆14、15日 福田氏は取材陣に無言を貫くが、与党内でも辞任論強まる。
◆16日 財務省が、報道内容を全否定する福田氏のコメントを発表。新潮社を名誉毀損で提訴する準備を進めていると明かす。