北朝鮮は20日、平壌で朝鮮労働党の中央委員会総会を開き、核兵器開発が実現したとして、21日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を中止、「北部の核実験場を廃棄する」と決定した。朝鮮中央通信が21日、伝えた。史上初の米朝首脳会談実現へ条件を整える狙いとみられる。一方、核放棄には踏み込まず、トランプ米政権は今後、北朝鮮に完全非核化の意思があるか見極める。

 北朝鮮は、北東部豊渓里(プンゲリ)の核実験場を廃棄するとしたが、期日など具体的な手順には言及しなかった。「非核化」に具体性を持たせる狙いとみられるが、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れるのかは不明だ。

 北朝鮮は豊渓里で過去6回、核実験を強行してきた。金正恩党委員長は総会で「国家核戦力建設という大業を短い期間で完璧に達成した」と述べ、核実験場は使命を終えたと説明。「核兵器なき世界の建設に積極的に貢献する」としたが、すでに開発済みの核兵器を廃棄するのかどうかについては言及しなかった。

 決定は、史上初の米朝首脳会談に向け、交渉に向けた準備を整える一環とみられる。しかし、北朝鮮の完全非核化を目指す米国の立場とは隔たりが大きく、交渉は難航も予想される。

 トランプ大統領は同日、ツイッターで「北朝鮮と世界にとって非常に良いニュースだ」と表明。27日に南北首脳会談を控える韓国大統領府も「非核化に向けた意味ある進展」と評価した。安倍晋三首相も「前向きな動きだ」と述べた。

 正恩氏は総会で、中長距離弾道ミサイルの発射実験も必要なくなったとも述べた。米領グアムを射程に収める中距離ミサイル「火星12」を指しているとみられ、日本を狙う中距離「ノドン」などの扱いは依然不透明だ。

 採択された決定書は「わが国に対する核の威嚇がない限り、核兵器を絶対に使用しない」と表明。「核実験の全面中止のための国際的な努力に合流する」と主張、核兵器と核技術を国外に移転しないことも盛り込んだ。

 核開発と経済建設を同時に進める「並進路線」の「勝利」を宣言するとして事実上撤回し、経済建設に総力を挙げる新たな路線も決定。経済建設に有利な環境をつくるため、国際社会との対話を積極化すると表明した。