愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から、受刑者の平尾龍磨容疑者(27)が脱走した事件は、22日で発生から2週間が経過した。8日夜から潜伏しているとみられる広島県尾道市の向島(むかいしま)では、これまで延べ約1万人が捜索を行ったが、容疑者は見つからず。島内では13日を最後に盗難被害もなく、有力な情報は集まっていない。

 9日早朝に盗難被害に遭った島北東部に住む男性(76)は「(容疑者が)まだ島にいると考えると、ゆっくり眠れない。夜、ちょっとした物音でも怖い」と打ち明けた。隣の家に暮らす息子夫婦とともに被害を受けた。車の鍵、携帯電話などを盗まれ、息子の妻(49)は財布から現金7000円ほどを盗まれた。どちらの家も事件当時は鍵を掛けておらず、容疑者の侵入には誰も気が付かなかったという。

 男性は、携帯電話を置いていた居間のすぐ隣の部屋で寝ていたといい「逆に気が付かなくて良かった。襲われていたかもしれない」と振り返った。ただ、盗まれたボールペンと手帳などは家の近くで見つかり、達筆な字で「車をお借りします。傷はつけません」と置き手紙も残されていた。実際には車も盗まれておらず、男性は「憎むに憎めない部分もある。彼(容疑者)の心境が理解できない」とこぼした。