千葉県松戸市のベトナム国籍の小学3年生レェ・ティ・ニャット・リンさん(当時9)が殺害された事件でわいせつ目的略取・誘拐、強制わいせつ致死、殺人、死体遺棄の罪に問われた渋谷恭正被告(47)の裁判員裁判第10回公判が18日、千葉地裁(野原俊郎裁判長)で開かれ、検察側は死刑を求刑した。弁護側は無罪を主張した。

 検察側は、遺体の腹部から渋谷被告とリンさんのDNA型を過不足なく含む混合DNA型が検出されたことで犯人性は十分とした上で、弁護側が主張する証拠の捏造(ねつぞう)の可能性も「理由がない」と否定。「幼い児童を略取誘拐し陵辱の限りを尽くし、殺害し、死体を遺棄した犯行は、特異かつ冷酷、残忍で極めて悪質で反省も皆無」とし、過去の同種の事件に照らしても死刑求刑が相当とした。

 弁護側は無罪を求め、渋谷被告が事件当日の見守り活動や補導員の研修会を渋谷被告が欠席した理由が「仮にうそでも犯人である証拠にはならない」と指摘。DNAの汚染の可能性についても「ヒューマンエラーを完全に排除するのに十分とはいえない」とした上で「刑事事件の原則は『疑わしきは被告人の利益に』。渋谷さんが犯人の可能性しかないと言えるのか」と訴えた。

 渋谷被告は最後に意見を求められ「最初から言っている通り、わたくしは無実、無罪でございます」とあらためて無罪を主張。「最初から私のことを信じて待っている子ども2人のために公正な判断をしていただきたい」と主張した。

 結審後、リンさんの父レェ・アイン・ハオさん(35)は会見し、「検察側は、証拠と証人の証言に基づいて死刑を求刑した。ありがとうございます」と死刑求刑に感謝の言葉を述べた。初公判から10回。欠かすことなく法廷に入り、渋谷被告の目に見入ってきた気持ちを問われ「本当は、許されるのであれば、自分で処罰したいが、それは人として許されない。私は日本の法律を守る。だから、私はこの裁判の判決を待ちたい」と話した。

 リンさんの母グエン・ティ・グエンさんも会見に同席。検察側の死刑求刑に「私たちは日本人じゃなく、被告は日本人。検察も公正な求刑をしてくれるか不安もあったが(今日の死刑求刑を聞き)、公正な裁判が行われるのだと思い、安心した」と話した。

 判決は来月6日に言い渡される。