大阪府北部で発生した震度6弱の地震は、子どもたちの通学時間を直撃した。高槻市では登校途中の市立寿栄(じゅえい)小4年、三宅璃奈さん(9)が小学校にあるプール沿いのブロック塀の下敷きになって死亡した。塀は建築基準法で定める高さを超え、違法建築だったこともその後、分かった。

 高槻市栄町の市立寿栄小学校。「壁が崩れて、女の子が下敷きになった」。激しい揺れに見舞われた直後、児童が門の前にいた警備員の男性(70)のもとに駆け寄ってきた。

 同小の道路沿いにあるプールのブロック塀が約40メートルにわたり道路側に倒れ、通学途中の同小4年の三宅璃奈さんが巻き込まれた。警備員の男性らは近くの住民と協力してブロック塀を持ち上げようとしたが、まったく動かすことができなかった。三宅さんは上半身が下敷きになっていた。近くを通りかかったトラック運転手がジャッキを使ったが、動かすことができなかった。

 付近に住む女性(73)は「女児の足がずっと見えていたので、男性らが一生懸命声をかけ続けたが、反応がなく意識がなかった」。地震発生は18日午前7時58分ごろ。女性によると、児童の登校は午前8時すぎからピークを迎えるという。

 高槻市によると、三宅さんは学校で児童会の代議員を務め、11日から2週間の予定で朝の「あいさつ運動」の当番だったため、普段よりも10分早く登校してきた。三宅さんは弟と両親の4人暮らし。笑顔がかわいい子だった。

 地震時、門の近くにいたという小4男児は「ドーンという音がして壁が倒れた」と話した。三宅さん宅の向かいに住む女性(71)は「いつもは8時過ぎに出るけど、あいさつをする当番で早く出ると言っていた。こんな日に限って…」と声を震わせた。小学校の近くに住む主婦(68)は「長男が小学校に通っていた40年以上前からブロック塀はあった。ブロックの中に鉄筋が入っていなかったのでは」と不安そうに話した。

 一方、高槻市は18日午後、このブロック塀について違法建築だったことを明らかにした。プールは1974年に設置。当初は基礎部分の1・9メートルだけで、その上はフェンスだったが、プールの中が見えないように、基礎部分の上に1・6メートルのブロック塀を積み上げた。計3・5メートルとなり、2・2メートル以下という国の基準を超えていた上、基礎と塀を固定する設備もなかった。大きな揺れと、違法に設置されたまま放置されていたブロック塀という「凶器」が、女の子の命を奪った。【松浦隆司】