町は茶色く濁り、行き交う人たちは泥だらけだった。西日本豪雨の影響で、多数の死者が出ている広島県では8日、被害の状況が見えてきた。

 広島市の中心市街地から約30分ほどの安芸郡坂町では6日夜、町内を流れる総頭川が土石流にせき止められ氾濫。午後7時ごろから水や泥が町へ流れ込み、町を茶色く染めた。8日午後から水が引き、住民は泥をかき出す作業に追われた。道路脇には、浸水防止の土のうと山にもられた泥が各所で見られた。道路は10センチほどの泥に埋もれ、流木が散乱していた。

 川近くのマンションに住む梶原沙織さん(36)は「土のにおいがして、ヤバイと思った。1、2分で水が上がってきた」と振り返った。水かさは最大時で、止めてあった車の高さまで来たという。近所に住む中木翔さん(26)宅は、1階の天井まで水が来たといい、2階に避難後、停電。携帯の光を頼りに救助を待ち、6日深夜3時ごろ、救助隊のボートで助け出された。「命があって良かった」と心の底から絞り出した。

 中木さんは4年前、広島市安佐北区で起きた土砂災害のボランティアに参加。「(4年前と)同じ状況。まさか自分の家が」と想定外の被害を話した。取材中にも、浸水した民家から高齢女性の遺体が発見された。深いところでは膝まである泥の中を、救急隊が懸命に運び出していた。安否不明者はさらにいる模様で、同じ光景が繰り返されないことを祈った。

 広島市安芸区を流れる瀬野川では、そばを通る国道2号が各所で陥没。市外への通行は、ほぼ遮断され、物流などにも大きな影響が出そうだ。人が太刀打ちできない、自然の脅威をまざまざと肌で感じた。【奥田隼人】