第100回全国高校野球選手権大会で、34年ぶりのベスト4進出を決めた金足農(秋田)の奮闘を、日本唯一の日刊農業紙、日本農業新聞が連日「熱報」している。100回の記念大会に農業高校の出場が決まり、初の本格的な甲子園取材に踏み切った。19日付の紙面には、逆転サヨナラ劇による4強進出のニュースが、初の1面掲載。担当者は「全国の農業関係者が誇りに思っている。勝ち負けにとらわれず、全力で頑張って」とエールを送った。

 今大会に出場している唯一の農業高校、金足農の躍進を、日本農業新聞が連日報じている。農業に関する報道がメインの同紙が甲子園で本格的に取材するのは初めて。カナノウ旋風の話題性の高さを表している。

 「100回の記念大会。ぜひ農業高校を取りあげたい」。農政経済部次長の福井達之デスク(44)は大会前、大阪支所の前田大介記者(41)に相談された。以前、地方紙で高校野球取材の経験がある前田記者は、農業高校が出場なら金足農が有力校の1つとみて、情報収集を重ねていた。出場が決まると「勝ち負けより応援する人、農業に関わる人の思いを柱に報じる」と決定。結果に加え、部員の家族やOB、応援団や地元の声を取り上げてきた。

 17日の横浜戦で逆転3ランを放った高橋佑輔内野手(3年)は、レギュラー唯一の畜産専攻。学校では動物の世話をする選手の「日常」にもこだわる。甲子園取材は前田記者が1人で担当するが、3回戦以降、地元秋田にも記者を1人派遣してカナノウ旋風を追う。

 農業の専門紙が、高校野球を報じる-。意外な? 組み合わせに、ネットから反響が広がった。「違和感というか、意外性を感じてもらえたのでは」(福井デスク)。農業高校は全国で117校まで減少したが、農業は日本の食を支える基本だ。東日本大震災以降、農業や「食」への関心の高まりを感じていたところに、今大会のカナノウ旋風。ナインの活躍が、「農業に対する関心を引きつけるきっかけになるのではないか」とも、感じている。

 金足農の話題は通常、社会面で報じるが、休日で紙面構成が異なる19日付は、4強進出のニュースが初めて1面に掲載された。20日の準決勝を勝てば、いよいよ決勝だ。「決勝進出なら(文句なしに)1面にいかざるを得ないですね」と福井デスク。「全国の農業高校、農家も注目している。全力で頑張ってほしい」。カナノウの夏を、最後まで見届ける。【中山知子】

 ◆日本農業新聞 1928年(昭3)3月20日、創立。「市況通報」として発行を始め、今年で創刊90年。日本で唯一の日刊農業専門紙で、食と農の総合メディアとして発信を続ける。従業員297人(17年3月末)。本所は東京都千代田区。大橋信夫会長。