作家の村上春樹氏(69)がDJ(ディスクジョッキー)に初挑戦し、TOKYO FMで5日午後7時から放送された番組「村上RADIO~RUN&SONGS~」が、パソコンやスマートフォンでラジオを聴くことができるサービス「radiko」の過去1週間以内の放送を聴くことができるタイムフリー聴取で、在京ラジオ同時間帯平均で83・8%のシェアを獲得した。20日、同局が発表した。

 同局は、タイムフリー聴取の期限となる12日まで集計した結果、関東1都6県のタイムフリーシェアで83・8%を記録したと報告。「放送直後も話題になったラジオ番組を、タイムフリーで聴取しようというリスナーがあらためて多かったことを実証しました」と分析した。

 「村上RADIO~RUN&SONGS~」は、「1人で、いつでも出来る」という理由でランニングを愛好する村上氏が、ランニングの際に聴くという1台あたり1000~2000曲入ったiPod(アイポッド)7台から、選りすぐった12曲をオンエアした。村上氏は「テーマは『僕が走る時に聴く音楽』。難しいのはダメ。一貫したリズムがいい」などと選曲の意図を説明。12曲の中には、放送から11日後の16日に亡くなった米国の女性ソウル歌手アレサ・フランクリンさん(享年76)が歌った「マイウェイ」もあった。

 村上氏は、番組の中で「もともと文章家になるつもりがなかった。音楽を仕事にしようと思い、そういう仕事をしていたが突然、小説を書いた。誰かの技法を学ぶよりリズム、音楽を意識した」と自らの作家としての成り立ちを明かした。そして「踊りながらは書かないけど、フィジカルで書く傾向が強い。僕の本が好きな人は、好きな音楽の傾向が似ていると思う。文章は音楽から学んだ」と語った。

 また35年間、毎年フルマラソンを走っているといい「(走り始めた頃は)走る作家がいなくてバカにされたけど、世の中も変わって作家も走るようになった」と苦笑した。その上で「下半身が安定しないと、いい文章が書けない。誰も信じないけど。上半身が柔らかくなり、良い文章が書ける。フィジカルは大事なんですよ。体力がないと2、3時間集中して机で文章は書けない」と、頭脳労働と思われがちな文筆業に、肉体労働の側面もあることを強調した。

 番組には、世界中から質問が届いたといい、葬儀の時にかけて欲しい音楽は? という質問が30通も届いた。村上氏は「みんな、何でそんなこと聞きたいのかな? 死ぬ時くらいは、静かに死にたい…ノーミュージック。マイミュージックとかカセットを作って、女の子に引かれることあるじゃないですか? そんなことを繰り返したくない」と苦笑交じりで答えた。

 村上氏は番組の最後で「僕は意外にというか結構、楽しかったです。また、そのうちにお目にかかれるといいですね…さよなら」と、第2弾にも意欲を示した。