日本列島を襲う地震、台風、豪雨などの天災に対し、官民ともに防災の意識が高まっている。中でも高知県では、防災対策の強化とともに、産業振興策としてさまざまな防災品を開発している。将来起こると考えられる南海トラフ地震で、甚大な被害予想が公表されたからだ。都内でこのほど行われた防災関連のイベントでも、啓発グッズや車両などが展示されていた。

高知県産業振興センターのブースでは、「備える」「逃げる」「生きる」の3つをテーマに、防災関連登録製品が展示されていた。10~12日に都内で行われた「危機管理産業展2018」。国内外約200のブースがあったが、都道府県ブースは珍しい。高知県商工労働部では、「防災に力を入れているのは、ほかに東京都か新潟県くらい」と言う。

「備える」では地震や津波の外力に耐えられる二重鋼矢板の「インプラント堤防」や携帯防災セット「くるめる7点セット」、「逃げる」では津波避難用階段の「シェルターステップ」、震度5以上の揺れを感知すると解錠する「防災BOX」、「生きる」では5~7年間保存できる「非常用飲料水SuperSave(スーパーセーブ)」や、高知産のお菓子で5年保存できる「ミレービスケット」、毛布の備蓄スペースを従来の約5分の1に凝縮した「不織布毛布」などの製品がある。

これらの製品の売り上げは、昨年度約60億6000万円。昨年認定された製品は131品を数える。2012年度は約6000万円(47品)だから、着実な伸びを見せている。

防災により力を入れ始めたきっかけは、6年前。内閣府の被害想定発表だった。南海トラフ地震に襲われた場合、県内大半の市町村の震度は6強。黒潮町と土佐清水市では最高34メートルもの津波が来るとされた。

危機感を抱いた。「命を守る」対策の徹底と、「命をつなぐ」対策の加速化を急務とした。防災を啓発するとともに、産業として振興させる対策も立てた。

台風や地震などの被害に遭って避難所生活を余儀なくされた人たちから、困ったことなどを聞き取り調査した。インフラ対策も強化した。民間企業の協力を得て、製品開発が進んだ。結果的に、県の製品を他県や台湾、インドネシアなどの海外にもPRして売り出すなど、「地産地消」から「地産外商」へと広がった。

「全国に15年も先行して、高知県の人口は自然減少し始めた。高齢化も10年先行している。経済も衰退する。これに歯止めをかけるためにも、防災品の開発は不可欠だった」(高知県商工労働部)。

これらの事前投資で、13年5月時点で死者約4万2000人だった予測は、来年3月に同約8100人まで減ると、県では算出している。まさに「備えあれば憂いなし」。防災先進県の取り組みは、首都直下型地震や、ゲリラ豪雨対策の参考にもなりそうだ。【赤塚辰浩】