世界遺産に登録されている中東ヨルダン南部のペトラ遺跡や周辺で9日、土石流や大規模な鉄砲水が発生した。現地を訪れていたツアー客45人と添乗員2人、計47人の日本人を含め、さまざまな国の3700人以上が遭遇。全員が無事避難したが、遺跡内は泥の濁流に突然襲われ、「間一髪」の脱出劇だった。同遺跡は、米映画「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」のロケ地でもある人気観光地。異常気象に見舞われ続ける地球を象徴するような出来事だ。

古代都市遺跡をめぐる人気の観光地で、想定外の土石流が発生した。土石流に遭遇した日本人観光客ら47人は、旅行会社「クラブツーリズム」(東京都新宿区)が主催した2つのツアーに参加。一行は9日、遺跡で観光を終え、夕食を取るためホテルに戻る途中、土石流に遭遇した。参加者は、現地ガイドや添乗員の誘導で高台に避難。水位が下がった後、バスでホテルに戻った。けが人はいない。

遺跡周辺にいた3700人以上の観光客は、全員無事避難した。ただSNSに投稿された映像には、目の前を流れる濁流に巻き込まれないよう石壁に張り付く観光客の姿もあった。

「濁流は津波のようだった」「間一髪で助かった」「トラックの荷台に立って避難した」。共同通信の電話取材に応じた日本人観光客は、口々に恐怖の体験を語った。千葉県浦安市から夫婦でツアーに参加した男性(70)ら16人のグループは9日午前に観光。午前中は天気が良かったが、昼休憩の間に「集中豪雨のような、ものすごく激しい雨が降り始め、雷の音も聞こえるようになった」という。午後1時半ごろに遺跡を離れようとしたが、目の前の橋が「みるみるうちに濁流にのみ込まれ、渡れない状態」に。避難用のトラックに乗るまで「1時間以上も待たされ、生きた心地がしなかった」と声を震わせた。

31人の別グループの女性(53)は遺跡内の通り道は幅が狭く「大雨が降ると、周辺から水が集まってくる場所と聞いた」と話した。

ペトラ遺跡は85年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録。米映画「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」のロケ地にも選ばれた。ヨルダンの死海付近では10月下旬に大規模な洪水があり、少なくとも21人が死亡し、35人が負傷。9日はヨルダン各地で大雨による洪水が起き、国内で7人が死亡した。