登山家でプロスキーヤー三浦雄一郎氏(86)が3日、南米最高峰アコンカグア挑戦を前に都内で会見した。

登頂成功率約30%の難関で、三浦氏は「ダメならあきらめるが、限界まで頑張って、それが頂上ならこんなうれしいことはない」と意欲を示した。その上で「究極の老人介護登山と思ってます」と、冗談交じりに登山隊のサポートに感謝した。

登山隊に楽観的な見方はない。山頂付近は足元が崩れやすく「あり地獄のよう。(死者の)十字架も立っている」(三浦氏)という。山頂到達後はスキーで滑降予定のため、同行する次男豪太氏は「足に体重以上の負荷がかかり、息を整えるヒマもなく、無酸素状態。エベレストを登って下りるより厳しいかも」。大城和恵チームドクターも「なんといっても生きて帰ってくること。生物学的には86歳です」と話した。加えて三浦氏はここ数年、不整脈の持病を抱える。7人の登山隊には、11度のアコンカグア登頂成功者を含む体制が敷かれた。

とはいえ、13年には80歳でエベレスト登頂に成功した三浦氏。会見でもたくましい発言が続いた。「今の体重はあまり言いたくないが86キロ。できればベースキャンプで70キロまで持って行ければ」としつつ「アルゼンチンは世界有数のおいしいワイン、世界最高のステーキが待っている。(体重が)どうなるか」と笑いをさそった。

エベレスト登頂時から日常生活では片足2キロの靴を履き「登山靴が軽く感じる」トレーニングも欠かさない。この日、会見会場は2階だったがエレベーターを探しもせず、計4キロの足を1歩ずつ踏みしめて上った。三浦氏は「守りの健康があるなら、攻める健康があっていい。エベレストを登るには、ウオーキングとかラジオ体操、バランスの良い食事といった守りの健康だけでは…」と、プライドものぞかせた。

また、東京五輪を担う若いアスリートに対しても「20年は目の前。自分が、世界のトップへチャレンジする日本選手の勇気になれば」とメッセージを送った。

アコンカグアは85年に三浦氏が初登頂に成功したことで7大陸最高峰制覇を成し遂げた「思い入れのある」山。登山隊は来年1月2日に日本を出発、高度順応などを経て同月21日に山頂に到達する予定。成功ならもちろん、途中断念でもたたえられるべき勇気だが、まずは無事に。86歳の、まさに、命をかけた挑戦となる。