昨年10月に移転した東京・豊洲市場で初となる、新年最初の取引「初競り」が5日早朝に行われ、一番マグロが史上最高額の3億3360万円で競り落とされた。これまでの最高1億5540万円を2倍以上更新するご祝儀価格に、市場関係者や見物客らは騒然。一部からは疑問の声も上がったが、落札した「すしざんまい」を運営する喜代村(東京)の木村清社長(66)は「豊洲もハッピー、築地もハッピー」と前向きだった。一番マグロはその後、築地場外のすしざんまい本店に運ばれ、ご祝儀価格で振る舞われた。

「初荷」と書かれた札が立ち、マグロがズラリと並べられた早朝5時過ぎの豊洲。小池百合子東京都知事が輪の中心で見守る中、鐘の音を合図に一番マグロの競りが始まった。数分後、どよめきと歓声。小池知事は一瞬驚き、笑みを浮かべた。100人以上集まった市場関係者の輪が解けると、1人が報道陣に向かって、少しあきれたような笑顔で「3億円! 喜代村!」と声を張り上げた。

一番マグロは青森・大間産の生のクロマグロで重さ278キロ、キロ単価は120万円。13年に同じく喜代村が落札した222キロの大間産クロマグロ1億5540万円(1キロ当たり70万円)の2倍以上で、東京中央卸売市場で記録が残る99年以降、最高額となった。

木村社長は落札後「やっちゃったね。やりすぎちゃった。5000~6000万円くらいと思っていた。すぐ銀行さんに行かないと」と、ちょっぴり反省。ただ「一目見て、くぎ付けになった一番マグロ。お客様に元気をつけていただきたい。全店舗で出します」と話した。関係者によると、通常の競りなら上物とされるものでも1キロ当たり2万円。最後は1対1の競りで、値段が跳ね上がったという。

破格のご祝儀価格に、市場関係者からは驚きとともに疑問の声も上がった。都の幹部は「想像していなかった値段」。水産仲卸業者の男性(55)は「ご祝儀相場どころではなく、ちょっと度が過ぎている。宣伝にしてもどうなのか」と首をかしげた。

ただ木村社長はあくまでも、新市場の豊洲と、残された築地場外を盛り上げる気概のようだ。豊洲での初競りについて、築地に比べ「(マグロも人も)少ないね。いいマグロあんまりなかったのかな」と寂しげな表情も見せ、「豊洲になっても、これだけのマグロが出たぞ、と。豊洲もハッピー。築地もハッピー」と、最後は従業員一同の「すしざんまいポーズ」で締めた。【大井義明】