スリランカ出身で羽衣国際大教授のタレント、にしゃんた氏(49)が8日、大阪市内で会見し、今夏の参院選の大阪選挙区(改選数4)に国民民主党から出馬することを表明した。会見の途中には、涙を見せる異例の出馬表明となった。

テレビやラジオにも出演するにしゃんた氏が突然、うつむいた。教壇に立つ大学での最近の出来事を振り返っていたときだった。「学校を途中で辞めていった学生がいた。奨学金をもらっていたが、学費が払えなかった。奨学金は親が生活費に使っていた。ここは日本なのか…。豊かな国なのか。すごく歯がゆかった。日本の若者にですね……」と話すと、うなだれた。

約30秒の沈黙。顔を上げると、目から涙がこぼれた。ハンカチで涙をぬぐいながら「どんな家庭環境に生まれようと、ちゃんと学べるような…。そんなふうになってほしい」と言葉を震わせ、出馬を決めた1つの理由となった「教育格差の是正」を訴えた。

自己紹介では「17歳で初来日した。1度、スリランカに帰ったが日本のことが忘れることができずに、すぐに日本に来た」と語り、来日の際は父が自宅を抵当に入れて7万のお金を作り、持たしてくれたという。

新聞配達をしながら立命館大経営学部を首席で卒業後、博士号を取得。05年に日本国籍を取得した。09年に社会人落語日本一決定戦で準優勝。10年から羽衣国際大で教員として勤務するようになった。日本の女性と結婚し、2児の父でもある。現在は羽衣国際大教授だが、3月で辞め、退路を断って出馬する。

大阪選挙区は、与野党による大激戦が予想される。自民、日本維新の会が2人の擁立方針を決めているほか、公明、共産両党もそれぞれ現職が出馬予定。

同席した国民民主党大阪府連の平野博文衆院議員は「私以上に日本文化について詳しいかもしれない。これまでの日本での実体験を国政の場で生かしてほしい」とエールを送った。

「日本に来て30年以上が過ぎた。日本に恩返しがしたい」とにしゃんた氏。多数者も、少数者も、共に生きることができる社会の実現を目指したいという。