20日に就任2年を迎えるトランプ米大統領(72)の動きが慌ただしくなっている。金正恩氏との2度目の米朝首脳会談を2月末に行うと18日に発表し、壁建設予算を巡る対立から過去最長の28日目に入った政府機関の閉鎖問題では「19日午後3時(日本時間20日午前5時)に重大な発表を行う」とツイートした。トランプ政権の2年を、大統領ウオッチャーとして知られるタレントのパトリック・ハーラン(48)に聞いた。

重大発表というのは、国家非常事態を宣言して壁建設予算を国防予算から回すということだと思います。でもこれは本当は法律違反。だって国家非常事態じゃないもの(笑い)。

これまでの大統領なら、しなかったことをトランプはしてきました。「ファースト」の連発です。歴代大統領は開示した納税申告書類を出さなかったし、反縁故法で禁じられている家族を側近に入れた。自分の国の情報機関より、対立する国の大統領の言うことを信じると言った大統領も初めてです。

こんなにスキャンダルが出た大統領もいません。5億ドル(約550億円)の脱税疑惑が報じられ、5人の側近が有罪判決を受け、20人近くが起訴された。14歳の少女をレイプしたとされる候補を支持するとも表明しました。他の大統領がやったら終わってしまうような問題なのに1日、2日で収束して、支持も下がらない。

この2年で実現した公約は、減税と最高裁判事に保守派のカバノーを起用したことぐらいです。何もできていない。じゃあ何? スタイル? レトリック? 僕が知っている中で大統領では断トツに面白いです。こんなにネタをくれる人はいません。有権者が強く反応するホットイシュー(ホットな話題)ボタンをうまく押しているんです。

トランプは米国で進んでいる分裂の象徴です。現実は1つしかないはずなんだけど、(保守系の)FOXニュースを見る人は(リベラルの)MSNBCは見ない。トランプに対する見方もほぼ180度違うんだけど、それぞれの世界に入って、ファクト(事実)を共有していない。共有していないから議論もできないんです。

英語に「最後のワラ1本がラクダの背中を折る(The last straw breaks the camel´s back)」ということわざがあります。蓄積して最後はワラ1本で崩壊するという意味です。でも僕はトランプには来ないと思う。普通だったらとっくに来ているはずです。ワラどころか、不祥事をがんがん載せているのに、不死身です。ロシア疑惑を捜査しているモラー特別検察官がトランプはクロという報告書を出しても、共和党は動かないと思います。

◆パトリック・ハーラン 1970年、コロラド州生まれ。ハーバード大卒業後、来日。お笑いコンビ「パックンマックン」のパックンとして活動する一方、東工大非常勤講師として教壇に立っている。米大統領ウオッチャーとして知られ、「大統領の演説」(角川書店)などの著作もある。