平成に入ってすぐ、エロスとアートの壁を崩した写真集が世に出された。1991年(平3)に発売された女優樋口可南子の「water fruit」で、ヘアヌードが事実上解禁され、18歳の清純派、宮沢りえが一糸まとわぬ姿を披露した「Santa Fe」は165万部を売り上げるベストセラーに。ヘアヌードは社会現象となった。両作品を撮影した写真家の篠山紀信氏(78)が、ヘアヌードで始まった、平成という時代を振り返った。【取材・構成 大井義明】

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篠山氏は、平成で起きたデジタル化を、写真史の「大革命」と位置づけた。

篠山氏 撮った瞬間に見られて世界に発信できる。今フィルムでやっている人は趣味の人か、芸術家気取り(笑い)。僕はどんどん仕事でやっていくから、時代がデジタルになればデジタル。時代はその時代のカメラで撮らなきゃダメなんですよ。作品性が強いものはフィルムもいいけどね。

-デジタルの特徴は

篠山氏 後から加工できる。これは善しあしだよね。フィルムは全く写らないことがある。昔のフラッシュとか、失敗すると真っ黒。つらい思いをしているから、撮る覚悟が違う。今はストロボもオートでしょ。でも「この一瞬」っていうのは、デジタルでも再現できない。まぐれの1枚を後から探しても、下手な鉄砲は何枚やっても写らないよ。僕はフィルムで精神を学んで、今はデジタル。だから仕事が来るんだよ。

-スマホで撮影も手軽に

篠山氏 ストロボで一生懸命撮っているのは新聞社くらいだよ。他のインタビューではスマホでパチリ。それがまた結構よく写るんだよ(笑い)。