北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が26日、陸路を約70時間かけ、米朝首脳会談が行われるベトナムの首都ハノイに到着した。

14両の専用列車で中国を縦断する鉄旅は中国各地で定期列車の運行に支障をきたし、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」には「あちこちで運行中止になっている」と不満の声が続々寄せられた。米朝首脳は27日、1対1で会談し、その後、側近を交えて夕食会を行う。

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23日に平壌を出発した特別専用列車は26日午前8時10分(日本時間同10時10分)、中国国境に近いベトナム北部のドンダン駅に到着した。平壌からドンダンは約4500キロ。韓国メディアによると「65時間40分」の鉄旅だった。

装甲車を上回る仕様で、緊急時のための小型ヘリまで搭載されているとされる専用列車の「平均時速は66・8キロ」(朝鮮日報)。このため、天津、武漢、長沙など中国各地で定期列車のダイヤが大幅に乱れた。「微博」には「あちこちで運行中止になっている」「13億人が1人のため道を譲っている」という投稿が相次いだ。投稿はほとんど削除されたものの、朝鮮日報は「少なくとも数十万人が被害を受けた」としている。

移動に鉄路を選択したのは「安全」のためとみられる。金氏にも60年代に開発された旧ソ連製の専用機「イリューシン62」があるが、長年の経済制裁で整備が不十分で、機種も古く故障が発生した場合、対応できないといわれている。昨年6月、シンガポールで行われた米朝首脳会談では中国が提供した航空機を使用したが、朝鮮労働党内には「威信」にかかわるとの声が出たといわれ、威信も鑑みての鉄旅だった。

もう1つの理由は祖父の故金日成主席だ。金主席は1958年と64年にベトナムを訪問したが、いずれも広州まで列車で移動した。北朝鮮の首脳のベトナム訪問はそれ以来55年ぶりで祖父の道をたどり、自身を重ねたとの見方だ。

鉄旅を終えた金氏はドンダン駅で専用リムジンの黒のベンツに乗り込み、160キロ離れたハノイに向かった。ハノイ中心部のホテル「メリア・ハノイ」に到着したのは午前11時(同午後1時)。丸3日近い長旅となった。帰路は、再び鉄路で平壌に戻るのかどうかは不明。再び3日かけると、平壌を10日間も留守にすることになり、一部は空路を使用するのではないかとも指摘されている。