東京都江東区のマンションで加藤邦子さん(80)が手足を緊縛されて死亡した強盗殺人事件は、1~2月にかけ、渋谷区で類似した被害が2件発生しており、同一グループの関与も疑われている。

都内では1月11日に渋谷区初台で、2月1日に同区笹塚で、そして同28日には江東区で、犯人グループがいずれも、事前に現金保管状況などをたずねる「アポ電(アポイント電話)」後に高齢者宅に押し入る手口の緊縛強盗事件が連続発生している状況。その3現場には共通点がうかがえた。

(1)大きな通りの近く

初台と笹塚の現場は甲州街道(国道20号)沿い。江東区の現場も都道10号線と四ツ目通りの近くで、いずれも車や人の往来も多い、地域の主要な幹線道路の付近だ。

(2)近くには個人商店が多く高齢者も目立つ

初台と笹塚の現場は、いずれも商店街の中で、年配の店主が切り盛りし、店頭に立っている店も少なくなかった。笹塚の商店街にいた80代女性は「働いている年配の人が多い。人柄が良い人が多く、渋谷区だが脇が甘く、お金を持っていると思われ、狙われているのではないか」と事件を受け警戒を強めていた。また江東区の現場も周囲には個人商店が幾つもあった。

(3)高齢者世帯への不審な電話が確認

初台の現場周辺では、健康保険料などの還付金があるからATMに行くよう要求する怪しい電話が、複数の高齢者世帯に繰り返しかかっているようだ。散歩をしていた高齢の男性は「最近、物騒だよ。年金の還付金を振り込めとかいう電話が、うちやうちの周囲にも繰り返しきている。リストでもあるのか…」と不安を訴えた。また笹塚の現場近くの商店街では、電話詐欺の多さを物語るように「還付金の振り込み詐欺に遭わないように」というアナウンスが繰り返し流れた。

(4)現場近くに銀行のATMコーナーがある

笹塚と江東区の現場に至る路地の角に、銀行のATMコーナー、出張所があった。犯人は現金の預け払いが頻繁に行われる場所近くを狙った疑いもある。

笹塚の被害者は事件から1カ月が経過した今もショックは癒えず、取材に「お話しすることはございませんので」と強い口調で話した。【村上幸将】